時と場を旅して
旧暦正月も過ぎて、ようやくのあけましておめでとうございます。
春節を祝う台湾から本が届きました。
台北のオンライン古書店「胡蝶書房」さんより、以前から気になっていたドイツのインゼル文庫。その中から貝の一冊を。
・胡蝶書房: Das kleine Buch der Meereswunder (Insel Bücherei Nr.158)
インゼル文庫(Insel Bücherei)とは、ドイツのインゼル社(Insel Verlag)から1912年に創刊された叢書。現在も続くシリーズですが、胡蝶書房さんが扱っているのは主に1930年代に刊行された自然博物画の描かれたもの。
私が購入した本について、胡蝶書房さんのサイトから引用させていただきます。
原画はドイツの版画家フランツ・ミヒャエル・レーゲンフス(Franz Michael Regenfuß, ca1712-1780)の手になるもの。
おそらくデンマーク王フレデリク五世(Frederik5., 1723-1766)に献呈された”Auserlesene Schnecken, Muscheln und andre Schaaltiere”(「貝と甲殻類精選」)から選定されたのではないか、と思います。
テクストは「蝶の生活」(Das Leben der Schmetterlinge, 1928)などの著作でも知られるドイツの詩人・小説家、フリードリヒ・シュナック(Friedrich Schnack, 1888-1977)。
本を開くと、色鮮やかな海中世界。
索引では当時の学名でしょうか(今とは少し異なるものも)、貝の名称も英・独の2種類で記されています。
成長する前のもので且つ完全な形では無いので同定に自信がないのですが、手持ちで似た貝とも一緒に。200年以上前に描かれたものが現代と繋がる。当たり前のように考えてしまいますが、この画とこの本が辿った道、更にはこの貝が辿った道。その双方を想うと奇跡のような出会いです。
巻末には文章と画の印刷会社の名前。その画の方はH. F. Jütte。京都大学電子図書館に金沢大学が所蔵する「近代教育掛図」から耳の解剖図が見つかりました。「近代教育掛図」自体も知らないものでしたが、これまた魅力的な博物画の数々。
・京都大学電子図書館:近代教育掛図「人体解剖図 耳」(H. F. Jütte, Graph. Kunstanstalt, Leipzig.)
インゼル文庫自体についても興味を惹かれましたので、その他のラインナップをチラ見。ドイツの伝説の奇人、ティル・オイレンシュピーゲルにまつわるものが。岩波文庫の『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』や、『のだめカンタービレ』で登場したシュトラウスの交響詩でも馴染みのあるもの。
ひとつの事象から次から次に関心が広がる楽しみ。