Archive for 2月, 2011

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2月

不忍ブックストリーム 第8回「羽鳥書店まつり一周年」

昨日、「不忍ブックストリーム 第8回」の配信を行いました。
今回のテーマは「羽鳥書店まつり一周年」

今回、紹介された本はこちら。

羽鳥さん

『木村蒹葭堂のサロン』 中村真一郎 / 新潮社(「羽鳥書店まつり」にて、ご自身で抜いた一冊。1,000円)
『池田学画集 1』 池田学 / 羽鳥書店
『冬の夏』 三瀬夏之介 / 羽鳥書店
『ほがらほがら』 山口藍 / 羽鳥書店
『ローマ法案内 – 現代の法律家のために』 木庭顕 / 羽鳥書店
『漢文スタイル』 齋藤希史 / 羽鳥書店
『ニッポンの風景をつくりなおせ – 一次産業×デザイン=風景』 梅原真 / 羽鳥書店

宮地さん(古書ほうろう)

『銃、ときどき音楽』 著:ジョナサン・レセム・訳:浅倉久志 / 早川書房

河上さん

『図書館棟春夏秋冬』 nanakikae / 自作豆本

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2月

Tree of Codes

Jonathan Safran Foer "Tree of Codes"

2月上旬、Tower Records渋谷店にて、Jonathan Safran Foer『Tree of Codes』を購入。

・Visual Editions: Jonathan Safran Foer “Tree of Codes”

Tree of Codes: 表紙

最初に存在を知ったのは「monogocoro」にて。

・monogocoro: 20101126 本の形をした彫刻(Tree of Codes)

心奪われたのは、もちろんこの文章が切りこまれた姿。しかし、著者であるJonathan Safran Foer(ジョナサン・サフラン・フォア)の名前にも見覚えが。収集癖のある主人公という設定に惹かれて見た映画『Everything is Illuminated(邦題:僕の大事なコレクション)』の原作者でもあり。どちらかひとつでも購入を検討する理由となるのですが、それがふたつとなると問答無用。本のジャンルとしてはどういったものなのか、どうしてページがカットされているのかといった背景を全く調べることなく、ただただこの目で見たい、手で触れたい。

しかし、購入への行動には大幅遅刻。昨年12月半ばにamazon.comでオーダーしたところ、発送は1ヶ月後とのアナウンス。ところが、実際に1ヶ月経った今年1月半ばになって、発送は3月になるとの再通知。待つかキャンセルするかの選択を問われているところにタワレコのツイートで入荷を知り、即座に電話。無事に入手となりました。

あとがきから本を読む癖で、まずは裏返し。すると裏表紙に推薦文と思しき文章。読み進めて最後に記された名前に辿り着くと、そこにはOlafur Eliasson(オラファー・エリアソン)と。ここでその名前を目にするとは。2人の関係までは知りませんが、更に期待は高まります。

Tree of Codes: 裏表紙(オラファー・エリアソンのコメント)

あとがきに目を通すと、Bruno Schulz(ブルーノ・シュルツ)『The Street of Crocodiles』の文章を切り抜くことで、新たな物語を創り上げているとの説明。そう、The Brothers Quay(ブラザーズ・クエイ)の『ストリート・オブ・クロコダイル』、その原作。何だか、これまでに見聞きしたことのひとつひとつがパズルのピースのようにはまって一冊の本になったかのよう。

切り込まれて作られた文章の簡単な一例を。

一番最初に上げた画像では「whole generations wore his mask.」となっています(文法的に気になるのですが、それは後述)。またそのように個々の単語が重なってひとつの文章になっているものに加え、下記の画像のような2つのページに跨って1つの単語になっているものも。上のページの「keyboard」と下のページの「less」が繋がって「keyboardless」

Tree of Codes: 言葉の繋がり

眺め触れているだけでも既に満足なのですが、そこに物語があるとなると少しでも知りたいと思う気持ちもフツフツと。そこで実際に十数ページ読み進めてみましたが、これが思いの外、頭に入ってきません。何ページ後ろまで遡ってカットされているのか、何ページ分の言葉が重なってひとつの文章になっているのかといった好奇心からくる理由はもちろんですが、それと同時に惑わされるのは、文章、そして単語そのものの形。

Tree of Codes: 悩ましい文章

カット位置によっては、こんな単語は存在しないだろうと思うものがあり、果たしてこれで正しくカットされているのかと気になっては先に進むことが出来ません。知らない単語があっても、まずは全体を読み通せと言われた受験英語の記憶が蘇ります。このままでは埒があかないので、一度書きだして整形した後に読むと良いのかもしれません。

と、内容にまではまだまだ踏み込めてはいませんが、見る、または所有するだけでも満足の一冊であることには変わりありません。何処かの素晴らしい出版社が邦訳を出してくれることにも期待したいです。

最後に裏表紙に記された出版社であるVisual Editionsの言葉を。

Visual Editions is a London-based book publisher. We think that books should be as visually interesting as the stories they tell; with the visual feeding into and adding to the storytelling as much as the words on the page. We call it visual writing. And our strap line is “Great looking stories.”

これを見た瞬間、牛若丸出版が頭に浮かびました。このような出版社としての姿勢が記された本に惹かれてしまいます。

A message of Visual Editions

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2月

不忍ブックストリーム 第7回「助っ人さんいらっしゃい!」

昨夜、「第7回 不忍ブックストリーム」の配信を行いました。
今回のテーマは「助っ人さんいらっしゃい!」

不忍ブックストリートの助っ人班からは吉井さん・吉上さん。助っ人さんからは、たけうま書房さん・猪熊さん・三五さん。そしてスカイプゲストとして、助っ人さんを経験されたデイさんが大阪から出演してくれました。

助っ人さんとは何かから始まり、その具体的な活動内容、そして助っ人さんご自身からの体験談んも披露していただきました。

春の一箱古本市の助っ人さん募集も始まっています。

・しのばずくん便り:20110209 助っ人さん募集します!


不忍ブックストリームでは毎回、出演者がお気に入りの一冊を紹介してくれています。配信中にツイートしないことも多いので、これからはリストとして残しておこうと思います(以前のものについても、随時アップするつもりです)

今回、紹介された本はこちら。

吉上さん

『やっぱりおおかみ』 佐々木マキ / 福音館書店

吉井さん

『百万遍 流転旋転』 花村萬月 / 新潮社

たけうま書房さん

『しかたのない水』 井上荒野 / 新潮社
『松嶋×町山 未公開映画を観る本』 町山智浩・松嶋尚美 / 集英社

猪熊さん

『東京映画名所図鑑』 富田均 / 平凡社
『心は孤独の狩人』 カーソン・マッカラーズ / 新潮社

河上さん

『アンダスタンド・メイビー』 島本理生 / 中央公論新社

三五さん

『LOK-MAGAZIN KALENDER 1982』 ドイツの鉄道雑誌の日めくりカレンダー
『プロコフィエフ短編集』 著:セルゲイ・セルゲーエヴィチプロコフィエフ / 訳:サブリナエレオノーラ・豊田菜穂子 / 群像社

個人的には『しかたのない水』と『LOK-MAGAZIN KALENDER 1982』に惹かれました。
前者はスポーツクラブが舞台だそうで、私自身もそこでは色々な体験をしているのでどんなエピソードが描かれているのか興味を覚えました。
後者は見た目がもう…。オレンジの地に黒文字の表紙、モノクロの写真・イラスト・図面、日付の太いフォント(特定するまでの知識は無かった)も効果的なアクセント。不忍の鉄道好きとしても知られる、古書ほうろうの宮地さんの食いつきっぷりも見事でした。

次回の不忍ブックストリームは2/24。
テーマは「羽鳥書店まつり1周年」

昨年2月に駒込大観音光源寺で開かれた、羽鳥書店社長である羽鳥和芳さんの20年分の蔵書を大放出した伝説の古本市。当時の様子は主催された古書ほうろうさん、そしてタグで追える谷根千ウロウロさんのブログを。

・古書ほうろうの日々録:20100112 開催決定!羽鳥書店まつり

・谷根千ウロウロ:羽鳥書店まつりタグ

ゲストはもちろん、羽鳥さんご本人。そして主催された古書ほうろうから宮地さん。あれから1年。当時の様子を振り返っていただくのはもちろん、現在の羽鳥さんの蔵書についても話は及ぶことと思います。

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2月

時と場を旅して

旧暦正月も過ぎて、ようやくのあけましておめでとうございます。

春節を祝う台湾から本が届きました。

台北のオンライン古書店「胡蝶書房」さんより、以前から気になっていたドイツのインゼル文庫。その中から貝の一冊を。

・胡蝶書房: Das kleine Buch der Meereswunder (Insel Bücherei Nr.158)

Das kleine Buch der Meereswunder (Insel Bücherei Nr.158):表紙

インゼル文庫(Insel Bücherei)とは、ドイツのインゼル社(Insel Verlag)から1912年に創刊された叢書。現在も続くシリーズですが、胡蝶書房さんが扱っているのは主に1930年代に刊行された自然博物画の描かれたもの。

私が購入した本について、胡蝶書房さんのサイトから引用させていただきます。

原画はドイツの版画家フランツ・ミヒャエル・レーゲンフス(Franz Michael Regenfuß, ca1712-1780)の手になるもの。

おそらくデンマーク王フレデリク五世(Frederik5., 1723-1766)に献呈された”Auserlesene Schnecken, Muscheln und andre Schaaltiere”(「貝と甲殻類精選」)から選定されたのではないか、と思います。

テクストは「蝶の生活」(Das Leben der Schmetterlinge, 1928)などの著作でも知られるドイツの詩人・小説家、フリードリヒ・シュナック(Friedrich Schnack, 1888-1977)。

本を開くと、色鮮やかな海中世界。

索引では当時の学名でしょうか(今とは少し異なるものも)、貝の名称も英・独の2種類で記されています。

Das kleine Buch der Meereswunder (Insel Bücherei Nr.158):画 01

Das kleine Buch der Meereswunder (Insel Bücherei Nr.158):画 03

成長する前のもので且つ完全な形では無いので同定に自信がないのですが、手持ちで似た貝とも一緒に。200年以上前に描かれたものが現代と繋がる。当たり前のように考えてしまいますが、この画とこの本が辿った道、更にはこの貝が辿った道。その双方を想うと奇跡のような出会いです。

Babylonische Turn (Turris babylonia / Pleurotoma Babylonica / ハデクダマキ)

巻末には文章と画の印刷会社の名前。その画の方はH. F. Jütte。京都大学電子図書館に金沢大学が所蔵する「近代教育掛図」から耳の解剖図が見つかりました。「近代教育掛図」自体も知らないものでしたが、これまた魅力的な博物画の数々。

・京都大学電子図書館:近代教育掛図「人体解剖図 耳」(H. F. Jütte, Graph. Kunstanstalt, Leipzig.

・京都大学電子図書館:近代教育掛図

インゼル文庫自体についても興味を惹かれましたので、その他のラインナップをチラ見。ドイツの伝説の奇人、ティル・オイレンシュピーゲルにまつわるものが。岩波文庫の『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』や、『のだめカンタービレ』で登場したシュトラウスの交響詩でも馴染みのあるもの。

ひとつの事象から次から次に関心が広がる楽しみ。