Archive for the ‘Exhibition’ Category

先週に足を運んだ、横浜のギャラリー・工房「10watts + chikuni」での「「 球体 」 球,あるいは球の形をした物体の展示会」。その素晴らしさから、ふと想い出しては空想の世界に旅立つこと度々。

「 球体 」 球,あるいは球の形をした物体の展示会

球体という形状、そして出展者の肩書を拝見して頭に浮かんだのはLenka Claytonの「Moons From Next Door」。宇宙船の窓から、今まさに着陸態勢に入らんとする未知の惑星。

Lenka Clayton: Moons From Next Door

さて、ギャラリーを訪れると、そこは俯瞰で眺める銀河の趣。この銀河を構成する百有余の球体群の齢は、数十年から古くても数百年。現実の銀河に比べれば乳飲み児のようなものですが、それらがひとつの空間に存在することで立ち上げる気配には、天を眺めるような畏怖の念を抱かずにはいられませんでした。

その気持ちから選んだのは白色矮星とでも呼びたい、ひび割れた白い球体。老成の極みであると共に、いつ粉々に砕け散ってしまうのかという儚さが同居しています。

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ある趣味嗜好をお持ちの方なら、球体をそのままポケットに入れて歩くことに憧れることでしょう。かくいう私も否定できませんが、今回の出展者にはラガード研究所の名前。となると、壊れてしまいそうなこの球体を蝋引きの箱に納めないわけにはいきませんでした。

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そうして持ち帰っての帰宅後、箱から取り出して眺めていると、新たな見立てに気がつきました。幼少時、どれだけ作ったかわからない雪玉。そのひとつがタイムカプセルの如く、実家の何処かに保管されていて、今回、それが姿を現したように見えてきました。当時の瑞々しさは消え失せ、水分を失い体積が収縮し、表面に無数のひびが入ったその姿の向こうに、数十年前の自分が17時のサイレンが鳴るのも聞かず、一心不乱に雪合戦に興じる姿が見えるかのようです。

1
2月

此処から其処へ

   Posted by: fumi

1/31から名古屋市のantique Salonで開催されている「Salon d’histoire naturelle 博物蒐集家の応接間」その初日に足を運んできました。

Salon d’histoire naturelle 博物蒐集家の応接間

Salon d’histoire naturelle 博物蒐集家の応接間

Salon d’histoire naturelle 博物蒐集家の応接間

訪問のきっかけは、玉青さんのブログ「天文古玩」の記事。

天文古玩:博物サロン

イベント初日、1/31のレセプションに玉青さんがいらっしゃるとのこと。この機会を逃すとお逢いする機会は無いかもしれない。しかし、お逢いしたいと思うと同時に、遠くから見つめるままでいたいという気持ちも拭えない。それは、まるで月を想うようなもの。月は地球から見上げるものであって、行くところではない。

その逡巡の果てに辿り着いた名古屋は4年ぶり。前回はJónsiのライブを見に訪れており(余談ですが、この時の舞台美術は2008年のデロールの火事に着想を得ています)、その際にantique Salonへも伺っていたことを覚えています。

対面なった玉青さんは、その場にいらっしゃった方々のなか、この方であろうと思ったまさにその方でした。ただただ、感謝の言葉しかありません。ありがとうございます。

玉青さんだけでなく、他にも様々な方との出会いがありました。
まずはもちろん、主催のantique Salonをはじめとした出店されている皆さん方。唯一、足を運んだことのある京都のLagado研究所、いつかはと思いながら未だ叶わない神戸のLandschapboek、下北沢のpiika。失礼ながら存じ上げなかった小諸のメルキュール骨董店、オンラインショップのdubhe。天文・植物・鳥類・海洋生物・人体等々、それぞれのお店毎に特徴の出た素晴らしい眺めでした。更に私と同様に日本各地からこのイベントに足を運んだ初対面の方々、こちらが一方的に存じ上げていた方との再会もありました。

そのような素晴らしい空間に身を置きながら、他方では自らを振り返る時間も少なくありませんでした。店内に陳列された目を見張る品々を、此処という我が家に置くことよりも、今回のイベントのように其処に赴いて見るということ。此処よりも其処が好きな私は、きっと今回の応接間の主である博物蒐集家にはなれません。これまで同様、機会があれば国内外問わず、其処に足を運ぶことに楽しさを見出すのでしょう。

 

開催初日から一夜明けた今日2/1、2008年にデロールが火事で燃えた日というのも、何かの符号なのかもしれません。この「博物蒐集家の応接間」は、東京での開催も計画されているとのこと。デロールがあの日から生まれ変わったように、このイベントの次なる物語が始まることに期待しております。

符号といえば、帰りの新幹線乗車前に寄った名古屋市内の古書店の棚に、入手しなければと思いながら先延ばしにしていた西野嘉章『ミクロコスモグラフィア マーク・ダイオンの驚異の部屋講義録』を見つけました。いささか出来過ぎた話ではありますが、この旅の終わりに出会ったのも何かの始まりと思い、鞄に忍ばせて車上の人となり、そして此処に帰ってきました。

Salon d’histoire naturelle - Microcosmographia

Salon d’histoire naturelle – Microcosmographia

6
12月

収集・分類・陳列

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人には得手不得手があります。
それは博物趣味とて、同じこと。その主な要素である収集・分類・陳列に関して、『緋色の研究』でワトソンがホームズに対して行った評価を、自分で自分に対して下してみると、次のようになるでしょう。

・収集
得意。集めるための調査・探究力に長けている。
ネットを介し、世界中どこからでも入手せんとする意志と行動力も有する。

・分類
極度にムラがある。
きっちりと調べ上げ、その保管も専用の箱を用い、またパソコンでデータベース管理しているものがある一方で、集めておきながら何もせず、そのまま放ってあるものも散見される。

また、このムラは実作業のモチベーションにも当てはまる。
やる時は寝食を忘れてやるが、やらない時は全くやらない。
故に、蒐集品をダブって購入したり、逆にひとつだけ欠けるなどのミスを犯す。

・陳列
最も苦手とするところ。
基本、自分だけが眺めるものであり、その見栄えには無頓着になりやすい。加えて、収集したものは自らが愉しむためのもの、対外的に発表することではないという意識も強いため、スキルを磨く向上心も欠落している。

今回は、その最後の話。
最も苦手とする陳列の機会に恵まれました。

東京の台東区と文京区が跨るところ、いわゆる谷根千と言われるエリア。その谷根千の「谷」 谷中にあるカフェ「Couzt Cafe(コーツトカフェ)」にて12/1から始まった「プレイモービルコレクション展」に私物のプレイモービルを展示させてもらっています。

まずは、その模様をお店のブログで。

Couzt Cafe ブログ:プレイモービル コレクション展スタート!

このブログでも何度か触れたプレイモービルですが、改めてご紹介。
プレイモービル(Playmobil)は、1974年、当時の西ドイツで誕生した子供向けのおもちゃ。似たようなレゴが四角のブロックから新たな形を「創造」する遊びであるのに対し、プレイモービルは、ごっこ遊び。具象的なパーツを組み合わせて情景を「想像」する楽しさに長けています。その存在を20世紀後半に知り、2000年代の半ば頃まで夢中になって集めました。それだけでは飽きたらず、ディズニーにディズニーランドがあるように、プレイモービルにも「ファンパーク」というテーマーパークが世界5ヶ所にあり、その中のドイツ・フランス・マルタ、3ヶ所にまで足を運ぶほど。

プレイモービルコレクション展 at Couzt Cafe

今回の展示、メインは未開封のアイテム。「Playmobil Special」と呼ばれる、1994年から1年に12個発売されているシリーズで、その200超の中から80個を壁に並べてみました。普段、段ボール箱に収納していたこともあり、こうやって並べてみると壮観なこと。他には、本国ドイツ以外(アメリカ・イギリス・ギリシャなど)で発売されていたライセンス商品。更におもちゃ本体以外で、キャリングケースやカセットテープ、ゲームボーイソフト、カードゲームなどの周辺商品も並べました。

プレイモービルコレクション展 at Couzt Cafe

しかし、箱だけではプレイモービルの魅力は伝わりません。先に述べた「想像」に遊ぶ楽しさを示すため、実際にふたつのシーンを作成しました。

プレイモービルコレクション展「結婚パーティー」 at Couzt Cafe

ひとつは、結婚パーティー。
新郎新婦と参列者。パーティーを彩るバンドにカメラマンなどを、複数の商品からパーツを選択して作成。新郎新婦の右で侍女が焼く豚の丸焼きは、元々、海賊の商品に入っていたものです。

プレイモービルコレクション展「魔法の森」 at Couzt Cafe

もうひとつは魔法の森。博物趣味としては、こちらがメインと言わざるをえません。
壁が崩れた建物の中にある魔術師の研究室。1階では、森の小人達にレクチャーする老魔術師。2階では、望遠鏡で空を眺める老魔術師の弟子。かぎ鼻の老魔女と蛇の杖を持つ魔女が薬草と骨を煮込む。

プレイモービルコレクション展「魔法の森」 at Couzt Cafe

「陳列」をすると、「分類」と「収集」も動き出します。
陳列のためには遡って分類が必要。この数年、ふたつの大きな箱にただ放り込んでいたプレイモービルを綺麗に洗い、テーマ(警察・海賊・中世・宇宙…)毎に仕切り板を設け、デジタルデータ化したことで処分したCDの収納に使っていたケースに入れました。すると、見えなかったものが見えてきます。ダブって所有しているものが見えるのは良いとして、欠けているものが見えると、その先の行動はひとつ。更に遡っての収集が始まります。ここまで来れば、眠っていた欲望が目を覚ますのは自然の理。欠けているものを探すうちに、これも欲しいあれも欲しいと新たなアイテムが目の前に。

終わったかと思っていた旅が、再び始まってしまったようです。

プレイモービルコレクション展「お菓子の家」 at Couzt Cafe

プレイモービルコレクション展 at Couzt Cafe

27
8月

Through the Weeping Glass

   Posted by: fumi

Through the Weeping Glass (via Mütter Museum)

いつも(一方的に)お世話になっている「Morbid Anatomy」にて、待望のニュースがアップされました。ブラザーズ・クエイがフィラデルフィアのムター博物館を舞台に製作を進めていたショートフィルムが、ついに完成。

・Morbid Anatomy: 20110821 ‘Quay Brothers Mütter Museum Film Premiere in Philadelphia, New York and Los Angeles This September!’

同じMorbid Anatomyで製作中との情報を知り、このブログに記したのは昨年11月5日。あれから約10ヶ月。まさに待望です。

・Imaginary Beings: 20101105 ‘The Brothers Quay at the Mutter Museum’

発表になったタイトルは「 Through the Weeping Glass: On the Consolations of Life Everlasting (Limbos & Afterbreezes in the Mütter Museum) 」31分のドキュメンタリー。Morbid Anatomyより引用します。

Through the Weeping Glass: On the Consolations of Life Everlasting (Limbos & Afterbreezes in the Mütter Museum) is a documentary on the collections of books, instruments, and medical anomalies at The College of Physicians of Philadelphia and the Mütter Museum. This short film (running time: 31 minutes) is the first made by the internationally recognized Quay Brothers in the United States.

「嘆きのガラスを通して: 永遠の生命の慰み」とでも訳しましょうか。ガラスケースの中に並ぶ、永遠の生命を獲得した人体標本の姿が脳裏に思い出されます。また人体標本のみならず、書籍(そういえば、人皮で装幀されたものもあった)や医療器具などの収蔵品も登場するとのこと。これはイギリスのウェルカム財団のコレクションを撮影した「The Phantom Museum」を思い出させますね。

今回、上映されるのはアメリカ国内の3ヶ所。

  • 9/22 The College of Physicians of Philadelphia, 18:30~
  • 9/24 The Museum of Modern Art, New York. 19:45~
  • 9/27 Cary Grant Theater, SONY Pictures Studios, hosted by The Museum of Jurassic Technology, Los Angeles, 20:00~

フィラデルフィアとニューヨークは当初のアナウンス通り、それぞれムター博物館とMoMA。ロスアンゼルスはケーリー・グラント・シアターに変更となり、当初の予定だったジュラシック・テクノロジー博物館は、ホスト役として関わるとのこと。
しかし、22日と27日は既にソールドアウト。24日のMoMAは、チケット発売情報が見つけられなかったものの、おそらく同様なのでしょう。このために飛ぼうなんて、ほんのちょっとしか思わなかったけれど(笑)これでスッパリ諦めもつくというものです

では、もう見られないのかといえば、DVDの発売が予定されていて一安心。この映画のメイキングを中心とした展覧会がムター博物館で開かれることになっており、その模様や同時開催のシンポジウムのドキュメントなども同梱されるとのこと。ここから更にまた首を長くして待つのですね。えぇ、待ちますとも。

1
12月

名古屋のデロールへ

   Posted by: fumi Tags: ,

明日から名古屋へ小旅行。

6月にパリで見たヨンシーのライブを、いよいよ日本で。東京公演において、先行抽選・一般発売共に完全敗北したための苦肉の策ですが、パリに比べたら名古屋はすぐそこ(しかし、名古屋・大阪は未だにチケットを購入出来るというのが。東京が異常なのでしょうね)。おそらく、これが最後の見納めとなる、デロールに発想を得たステージセット。堪能したいと思います。

EMI Music: Jónsi

ライブも楽しみですが、せっかくの機会ですから名古屋周辺の博物的なる場所にも足を運ぼうと調査。これは訪れてみたいと思う場所が幾つか見つかりました。

1. 東急ハンズ名古屋店:地球研究室

玉青さんのブログ「天文古玩」で目に留まった場所。

・天文古玩 20101118:「理科趣味アイテム、あります。」

化石・剥製・鉱石・実験器具… 博物好きの気持ちをくすぐる数々が並んでいるようです。東急ハンズということで、空間の怪しさは望むべきものではありませんが、いずれにせよこの目で確かめてみなければ。

2. 徳川美術館:「名古屋開府400年 徳川美術館開館75周年記念 特別展 国宝 初音の調度」

Twitter経由で教えてもらいました。
全くのノーマークでしたが、これが素晴らしく。特に箱物の数々には、箱馬鹿として胸躍ります。

そのなかのひとつ。16世紀に東南アジアからもたらされた「真珠貝玉箱」の怪しさたるや。同じ16世紀、神聖ローマ皇帝ルドルフ2世がプラハ城で愛でていたと言われても良さそうな造作。これを徳川家康が使っていたというのですから。

真珠貝玉箱

真珠貝玉箱 (via 徳川美術館)

3. 内藤記念くすり博物館

名古屋から足を延ばして、岐阜へ。
製薬会社、エーザイの創業者である内藤豊次が設立した博物館。

ここは以前から行きたいと思っていた念願の場所。ヨーロッパ・アメリカで足を運んだ医療系博物館に抱く期待と同じ物がここにはありそうです。

他にも、名古屋のキューガーデン、東山動植物園の温室や、数多の古書店なども訪ねてみたいものです。

30
5月

博物電子時代

   Posted by: fumi

情報というやつは飛び込む時は飛び込むもので。
東京大学総合研究博物館・小石川分館でのヴンダーカンマーにまつわる展示に続いて、武蔵野美術大学でもこの6月から魅力的な展示が予定されています。

武蔵野美術大学 美術館・図書館新棟落成記念 博物図譜とデジタルアーカイブ I

長文ですが、開催概要を引用してみます。

博物学の時代—ひとは世界をどのように見、記述して来たか

18世紀以降ヨーロッパを中心として、それまでの美術史には収まりきれない文脈の膨大な図像が制作されるようになります。それらは当時新しく登場した博物 学を中心とした動・植物図譜、航海記、地図、民俗学的図譜、解剖図譜などであり、多色銅版やリトグラフなど当時の最先端の印刷技術を駆使した書物として出版されました。武蔵野美術大学図書館では旧蔵の貴重書に荒俣宏氏旧蔵コレクション[*1]を加えることで、今日的な視点から18世紀以降の博物図譜を軸と する視覚資料を概観することが可能となりました。今回はそれらを公開するとともに、図版全ページを高解像度スキャニングしデジタルアーカイブ化を実施、本展のために開発したタッチパネル式高精細画像閲覧システムによって通常直接手に触れることができない資料を全ページ、細部にわたって閲覧できる環境を提供 します。また今後それをもとに恒常的に閲覧できるデータベースを構築することで、本学の研究基盤を成す図像学の観点から美術系・デ ザイン系の領域を超えた全学生にとって芸術的な視野を広げるだけでなく、新たな創作意欲や研究心の向上に資することを目指しています。また、新美術館・図書館に設置された造形研究センター[*2]を中心として、内外研究者のさらなる研究発展への貢献も期待できるでしょう。なお、本企画に関連した研究は今後も継続され、複数回の展覧会を通してその成果を公開する予定です。

[*1]荒俣宏氏旧蔵コレクション:当館はこれまで美術・デザイン資料の充実を目指して多数の博物図譜を収集してきました。それら体系的な構築強化のため に2006年度から2009年度にかけて文部科学省経常経費研究設備特別補助の採択を得たことにより荒俣宏氏旧蔵のコレクションを収蔵する事が可能となり ました。

[*2]造形研究センター:造形研究センターは「2009年度文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業プログラム」の選定採択を受けて全学的な研究 がスタートしました。新棟落成記念に併せて開催する本展は、美術館・図書館と造形研究センター近代デザイン研究プロジェクトチームの共催によって当館が所 蔵する貴重書コレクションのデジタル化を推進し、その研究成果を広く公開することを目的として企画されました。

寡聞にして「荒俣宏氏旧蔵コレクション」の存在を知りませんでした。何処かにその一覧は無いかと探したものの見つからず。しかし、図版全ページの高解像度スキャニング、そしてそれを閲覧するために開発されたタッチパネルシステムでもって体験出来るとは。「I」と銘打たれているのが気になり、サイトに掲示されている展覧会チラシ(余談ですが、展覧会に対してフライヤーと言うのは何処か気恥ずかしいんですよね)の画像を眺めると、第三期(2011年春)まで予定されています。これは中央線に乗る機会が増えそうです。

ところで、期せずしてここ最近、玉青さんがブログ「天文古玩」にて荒俣さん、そして博物図譜について多くのエントリーを書かれておられました。特に『世界大博物図鑑』と『ファンタスティックダズンシリーズ』が電子書籍化されているとは露知らず。ファイル形式が掴めないため二の足を踏んでおりますが、これらがiPadで読めるようならばグラっと行きかねず…近々、電子書籍時代の博物についても語ってみたいところです。

・天文古玩:アラマタ氏と驚異の部屋
・天文古玩:にわか博物学者、ふたたび
・天文古玩:にわか博物学者の気分で
・天文古玩:博物誌の博物誌、『世界大博物図鑑』
・天文古玩:ファンタスティックな残り香

26
5月

Wunderkammer: Neon Menagerie

   Posted by: fumi

とある理由から、東京大学総合研究博物館のサイトへ赴きましたところ、展示スケジュール更新のお知らせに遭遇。pdfを開くと、今までは掲載されていなかった新たな展覧会が小石川分館にて開かれることが分かりました。そのタイトルに一目惚れです。

「Wunderkammer: Neon Menagerie(仮称)」

Wikipediaで”Menagerie”という言葉を引きますと、近現代の動物園の先駆けとして使われたもの。後世には転じて、サーカスや移動遊園地などに立ち上がった見世物小屋的な意味合いとなったようです。

・Wikipedia: Menagerie

「Traveling Menageries」と題されたイギリス・シェフィールド大学のアーカイブでは、後者の意味合いがより強く出ています。

・The University of Sheffiled: Traveling Menageries

Sedgwick's Menagerie. c.1909. (via The University of Sheffiled: Traveling Menageries)

Day's Menagerie. Oxford St Giles Fair. 1895. (via The University of Sheffiled: Traveling Menageries)

会期は11月から12月にかけてと、まだ先の話ではありますが、今から楽しみでなりません。

15
6月

一番は昭和天皇の「あ,そう」

   Posted by: fumi

渋谷のPARCO Factoryにて「ナンシー関 大ハンコ展」。

会場の狭さと展示方法の相乗効果で,とにかく人が流れない。幅1.5mほどのケースの中に音楽・女優などワンテーマに沿った数百のハンコが並べられたら,そりゃみんな動かないって。

そのせいもあってか,ハンコよりも後半の仕事部屋と遺品の展示がより興味深く眼に飛び込む。篆刻の本,ムーンライダーズのライブチケット,岡本太郎グッズ…。生原稿の綺麗な文字は驚きでもありまた納得できるところでもあり。あの文字で全てのコラムを読み返すことが出来たら,また違ったことを思うんだろうな。

帰宅後,『TV. Bros』の特集も再度読み返し。川勝正幸・菊地成孔対談が素晴らしい。

10
12月

銀座→京橋

   Posted by: fumi

「スイスポスター100年展」
↓ NとZ
「永遠なる薔薇」
↓ 壁と床の際を照らす赤い光
「私的装幀デザイン展」
↓ マッハバンドに軽い眩暈
「ポーランドの映画ポスター」
『Yellow Submarine』を思わせるメカゴジラ
帰宅すると,amazonから『唐草抄―装飾文様生命誌』。
段ボールの梱包を引っ剥がした瞬間,息を飲む。店頭で買ってたらこの喜びは味わえなかったなぁ。ちょっとラッキー。
唐草つながり。来年,Tord Boontjeの展覧会。

13
11月

ハラさんとアリャマタさん

   Posted by: fumi

待ちに待った群馬アート紀行。
まずは伊香保,牧場の中に建つハラミュージアムアーク。 伊香保は何度か訪れていたけれど,こんな美術館があることは全く知らず。しかもそれが品川にある原美術館の別館だとは。
051113_01牧場を奥へと進むと現れた漆黒の木造建築(ちなみに設計は磯崎新)。A・B・Cと3つに分かれた展示棟を,その中心にある屋外ロビー(屋根付き)を介して行き来する。想像よりもコンパクトな内容ではありましたが,それが物足りなさではなく濃密さを増す方向で感じさせるところが見事。特に正方形のA棟は,中央に倉俣史朗,そしてそれを囲むように四面の壁には荒木経惟・杉本博司・Robert Mapplethorpe(ロバート・メイプルソープ)などが。中でもHelena Almeida(エレーナ・アルメイダ)の『Ouve-me』がかなりツボ。
051113_02B棟は扉を開けるといきなり毒々しい黄色と黒いドットの洪水。直島の海岸にポツンと佇む,草間彌生のあのカボチャのイメージが部屋全体を覆っている。直島では何も感じなかったけど,こっちにはそりゃもう気が狂いそうになるほど大興奮。
外庭の一角にはウォーホールのキャンベルズが(しかも巨大)。ぽつねんと佇む姿がどこか微笑ましい。
051113_03満喫しすぎて時間が押し気味。急いで群馬県立自然史博物館へ車を飛ばし,本日のメインイベント,「ニッポン・ヴンダーカマー 荒俣宏の驚異宝物館」へ。
今日という日を選んだのは氏の講演を聴くため。初めての生アリャマタコリャマタ,堪能いたしました(図録にサインもしっかりと頂く)。個人的なところでは,プラハのストラホフ修道院の話が出たのがちょっと嬉しかったり(澁澤龍彦と荒俣さんの著作を見て行こうと思ったんで)。
講演終了後,展示を拝見。
ヴンダーカマーと言えば,かつて東大で開催されたMark Dion(マーク・ダイオン)の展示を思い出すんだけど,あちらには整理と洗練を感じたのに対し,こちらは見世物的な猥雑感が強調された印象。どっちが良いということではなくて,ヴンダーカマーはそれを作り上げた人の趣味嗜好が強く反映されるものだということ。いやぁ,いいもん見た。
051113_09またどうしても荒俣さんの名前が前面に出ちゃうけど,実はここの博物館の館長さんもスゴイってことがわかりました。展示されている館長所蔵の品々,おもしろすぎ。 特に各種動物の陰茎骨コレクション。その数もさることながら,記されたキャプションが秀逸。「はずかしい けど見せたい」

余談だけど,写真撮影を完全に許している博物館の姿勢に感謝。頭ごなしに禁止するところが多い昨今(見る側のマナーが悪いってのもあるとは思うけどね),非常に心地良い対応でした。ってことで,画像を幾つか。
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