Archive for the ‘Wunderkammer’ Category

1
4月

ヘッケルの夢

   Posted by: fumi

日々に触れるネットでの行動について、指針としていることがあります。それは、知らない人の知っていることに触れるという考え方。文字にして書くまでもありませんが、世界には私の知らない素晴らしい人々が存在する。それら知らない人々の考えや、その人々が作り出す魅力的な物に出会いたい。

そんな考え方で行動していて目に飛び込んだのが、ボストンのあるデザイナーが手にしていたガラスに刻まれた放散虫の3Dモデル。透明な直方体の中に浮かぶその姿に、いてもたってもいられずオーダー。1週間の後に、手元に届きました。

bathshebaRadiolarians_01

製作はBathsheba Sculpture

サイトの説明によりますと、これらの放散虫はバルバドスの近く、第三紀(およそ6430万年前から260万年前)の地層から収集されたもの。顕微鏡検査の雑誌の記事で出会い、X線断層撮影スキャンで作られたモデルデータを提供してもらい実現。300倍というスケールを除けば、そのままの姿であるとのことです。

放散虫と言えば、エルンスト・ヘッケルを想い浮かべますが、もちろん、その名についても触れられています。顕微鏡の発明以来、好奇心と不可思議の眼差しで観察されてきた放散虫を初めて3Dで目にすることが出来るように。ヘッケルならば、これを見て何を想うことでしょう。

今回、購入したのは6種類が並んだタイプですが、そのいずれかひとつを拡大してオーダーすることも可能だそうです。

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我を忘れて眺めること、しばし。これまでぼんやりと想っていたことが、少しずつ言葉となって出てきました。いつの間にか時が経ち、一年ぶりの更新でしたが、ちょっときっかけになりそうです。

5
2月

博物のパリ

   Posted by: fumi

蒐集の道は日々の積み重ね。「博物蒐集家の応接間」に足を運んだことで、怠惰が過ぎたこのブログも少しは息を吹き替えそうという想いが湧きました。

とはいえ、長らくエンジンに火が入っていなかったので、まずは暖機運転。過去の整理で筆慣らし。

「博物蒐集家の応接間」会場にて、パリを訪れる方との会話があったことを想い出しましたので、過去に私が訪れたことのある博物にまつわる場所を撮影した写真と共にまとめてみようかと。

 

Les Catacombes de Paris(カタコンブ)

パリ市内、ダンフェール=ロシュロー広場の南に広がる地下納骨堂。地上からの深さ20m、全長は約2km。納められている遺骨は600万とも700万体とも言われています。チェコのコストニツェまでの装飾性はなく、どちらかと言えば淡々と積まれた人骨の中を1時間弱の旅。それだけの時間を過ごすと、歩き終わり地上に出た時の此処は何時の何処だという所在の無い感覚が心地良くて忘れられません。

Les Catacombes de Paris

Les Catacombes de Paris

Le musée de la Chasse et de la Nature(狩猟自然博物館)

1964年、ラグメーカーにして狩猟愛好家のフランソワ・ソメが開館した狩猟博物館。狩猟に使う武器・仕留められた動物の剥製・狩猟にまつわる絵画彫刻などの美術品、3つのテーマに分かれて展示されています。現代美術との親和性も強く、2008年のデロールの火事で焼け出された剥製・標本を使用した美術品の展示・オークションは此処で行われました。

Le musée de la Chasse et de la Nature

Le musée de la Chasse et de la Nature

Le musée Fragonard d’Alfort(フラゴナール博物館)

動物標本と人体標本で知られる博物館。なかでも解剖学者Honoré Fragonard(オノーレ・フラゴナール)の手による、皮膚が剥がされ筋肉や血管が露わとなった人体標本の数々は、目を逸らしたくなるも目を見張らざるをえず。

Le musée Fragonard

Le musée Fragonard

Le Cabinet de Curiosités de Joseph Bonnier de La Mosson

Le Cabinet de Curiosités de Joseph Bonnier de La Mosson

Le Cabinet de Curiosités de Joseph Bonnier de La Mosson

Grande Galerie de l’évolution(進化の大ギャラリー)で知られる国立自然史博物館の一角、図書館内に並ぶ驚異の棚。18世紀の貴族、ジョセフ・ボニエの収集物で、今日よく知られる驚異の棚の典型としての見応えあり。図書館自体は近代的なため、その差異もある意味で見どころ。

 

Musée d’Histoire de la Médecine(医療歴史博物館)

パリ第5大学内にある医療系博物館。吹き抜け2層の空間で、施術用器具を中心に義手・義眼などの人体系も並ぶ。日本から持ち込まれた人体経絡模型も。画像はオブジェだったか杖の頭だったか記憶が定かではないが、メメント・モリが強く印象に残ったもの。

Musée d’Histoire de la Médecine

Musée d’Histoire de la Médecine

ここからはショップ。

Deyrolle(デロール)

言わずと知れたの感ある博物商。とにかく、行けばわかります。

Deyrolle

Deyrolle

Claude Nature(クロード・ナチュール)

同じく博物商。サンジェルマン大通りに面したガラス張りの外観ということもあり、デロールに比べれば気軽に訪れることが出来ます。

Claude Nature

Claude Nature

La Librairie Alain Brieux(リブラリエ・アラン・ブリウ)

医学・科学系の古書店であると共に、それらにまつわるオブジェや器具も扱う。今思うと、今回の「博物蒐集家の応接間」に最も近い雰囲気を持っているのではと。少し距離はありますが、デロール→リブラリエ・アラン・ブリウ→クロード・ナチュールと歩くのも楽し。

La Librairie Alain Brieux

La Librairie Alain Brieux

 

他にも、もちろん国立自然史博物館は外せないし、アンソリットなギャラリーも数々あります。私が次に訪れたいのはMusée des Arts Forains。英語にするとMuseum of Carnival Arts。日本語では縁日博物館や遊園地博物館などと訳されています。メリーゴーランドなどの乗り物や、球投げ・輪投げのようなゲームなど、移動遊園地のアトラクションを集めた展示施設。これからもまだまだ尽きぬパリです。

Musée des Arts Forains

 

 

1
2月

此処から其処へ

   Posted by: fumi

1/31から名古屋市のantique Salonで開催されている「Salon d’histoire naturelle 博物蒐集家の応接間」その初日に足を運んできました。

Salon d’histoire naturelle 博物蒐集家の応接間

Salon d’histoire naturelle 博物蒐集家の応接間

Salon d’histoire naturelle 博物蒐集家の応接間

訪問のきっかけは、玉青さんのブログ「天文古玩」の記事。

天文古玩:博物サロン

イベント初日、1/31のレセプションに玉青さんがいらっしゃるとのこと。この機会を逃すとお逢いする機会は無いかもしれない。しかし、お逢いしたいと思うと同時に、遠くから見つめるままでいたいという気持ちも拭えない。それは、まるで月を想うようなもの。月は地球から見上げるものであって、行くところではない。

その逡巡の果てに辿り着いた名古屋は4年ぶり。前回はJónsiのライブを見に訪れており(余談ですが、この時の舞台美術は2008年のデロールの火事に着想を得ています)、その際にantique Salonへも伺っていたことを覚えています。

対面なった玉青さんは、その場にいらっしゃった方々のなか、この方であろうと思ったまさにその方でした。ただただ、感謝の言葉しかありません。ありがとうございます。

玉青さんだけでなく、他にも様々な方との出会いがありました。
まずはもちろん、主催のantique Salonをはじめとした出店されている皆さん方。唯一、足を運んだことのある京都のLagado研究所、いつかはと思いながら未だ叶わない神戸のLandschapboek、下北沢のpiika。失礼ながら存じ上げなかった小諸のメルキュール骨董店、オンラインショップのdubhe。天文・植物・鳥類・海洋生物・人体等々、それぞれのお店毎に特徴の出た素晴らしい眺めでした。更に私と同様に日本各地からこのイベントに足を運んだ初対面の方々、こちらが一方的に存じ上げていた方との再会もありました。

そのような素晴らしい空間に身を置きながら、他方では自らを振り返る時間も少なくありませんでした。店内に陳列された目を見張る品々を、此処という我が家に置くことよりも、今回のイベントのように其処に赴いて見るということ。此処よりも其処が好きな私は、きっと今回の応接間の主である博物蒐集家にはなれません。これまで同様、機会があれば国内外問わず、其処に足を運ぶことに楽しさを見出すのでしょう。

 

開催初日から一夜明けた今日2/1、2008年にデロールが火事で燃えた日というのも、何かの符号なのかもしれません。この「博物蒐集家の応接間」は、東京での開催も計画されているとのこと。デロールがあの日から生まれ変わったように、このイベントの次なる物語が始まることに期待しております。

符号といえば、帰りの新幹線乗車前に寄った名古屋市内の古書店の棚に、入手しなければと思いながら先延ばしにしていた西野嘉章『ミクロコスモグラフィア マーク・ダイオンの驚異の部屋講義録』を見つけました。いささか出来過ぎた話ではありますが、この旅の終わりに出会ったのも何かの始まりと思い、鞄に忍ばせて車上の人となり、そして此処に帰ってきました。

Salon d’histoire naturelle - Microcosmographia

Salon d’histoire naturelle – Microcosmographia

2
9月

帰舎

   Posted by: fumi Tags: ,

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A historical horse via Deyrolle

 

デロール、2008年2月の火事から5年半。その時、店内にいた馬の剥製が長い時を経て戻ってきたと、デロールのサイトに掲載されていました。

 

Deyrolle: Un cheval historique

 

ネットに残る火災当日の画像を幾つか眺めてみたのですが、この馬の姿を確認することは出来ず。また、私が初めてデロールを訪れたのは2008年9月ということで、実際の姿を見たこともありませんでした。これは近い将来、ご挨拶に伺わねば。

 

 

5
8月

物継ぎ、心継ぎ

   Posted by: fumi

またひとつ、かけがえのない物が出来ました。

完成まで半年~1年は見てくださいと言われた物をお願いしたのが、今年の2月。

・20120207:吉報を待ちながら

それからもうすぐ半年という先月末に完成の報せを頂き、手元に届きました。

20130805_nautilus_01

2012年の元日に地震で壊れたオウム貝を金継ぎで繕っていただきました。

・20120101:物は壊れる、人は死ぬ、三つ数えて、目をつぶる

 

この記事の中で、既に金継ぎに言及していますね。金継ぎの過程を記すといったことも書いているので、DIYショップにある金継ぎのキットでも試してみようと思っていたのでしょうか。とはいえ、器も継いだことのない者が、いきなり貝を扱えるわけもなく。かといって金継ぎをされている方を知るわけでもなく(こういう時に度胸があれば、ネットで見つけて積極的にお願いするのでしょうが) そうして時間が経つこと1年。嬉しいことに、日本酒の美味しいあるお店にて、金継ぎをされている方と出会う機会に恵まれました。

先方も貝を継いだ経験がないとのことで、まずは実物をお送りして判断を仰ぎました。結果、いけるのではということとなり、それが半年~1年は見てくださいという返事となりました。

結果は、ご覧の通り。白に映える金が素晴らしいです。

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物を壊すことは心も壊すこと。なんで本棚の高いところに置いたんだろう。いや、同じ棚でも奥に置いてれば落ちなかったのに… と、後悔の念に苛まれていましたが、この繕われた姿を見ると、語弊はありますが、壊れて良かったと思えてしまいます。金継ぎは心も継いでくれるものだということを、身をもって知りました。

 

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30
4月

壁に博物あり 障子に…

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アーサー・ミーの話の途中ですが、デロールで新たな発見。

思い出しては覗くデロールのオフィシャルサイトに、新商品が登場していました。コンピュータではなく、リアルな部屋向けの壁紙が発売されるようです。

Deyrolle: Papier peint Deyrolle-Wallpaper(オリジナル)

Deyrolle: Papier peint Deyrolle-Wallpaper(google translateによる英訳)

子供部屋や学校の教室で使われそうなポップなものから、寝室にも似合いそうなシックなものまで、複数のテーマによる商品展開。

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Deyrolle Wallpaper: Collection Patchwork (from deyrolle.fr)

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Deyrolle Wallpaper: Collection Les Insects (from deyrolle.fr)

フランスのファブリックメーカー「NeoDko」とのパートナーシップによって作られたもので、専用サイトも用意されています。このサイトにあるオンラインカタログを見ると、デロールのポスターやトランプで見覚えのある図像も使われていました。

Panoramiques by Deyrolle

この壁紙を使った部屋に驚異の部屋を作る。またひとつ、新たな夢(という名の妄想)が広がります。

18
2月

ある雨の朝に

   Posted by: fumi

冷たい雨が降る月曜日。

ドイツの古書店から、あるヴンダーカンマーに関する書籍をタイトルに惹かれ衝動買い。初めて知る書名でしたが、他のサイトで追加調査をすることもなく。

振り返ると、現地に足を運んだのは既に6年も前のこと。思えば遠くに来たものです。今でも想い出すあの空間ですが、注文した本に記されている空間はそれよりも更に30年も前のこと。

再訪の時を夢見て読むのも、また楽し。
到着まで約2週間です。

1
2月

如月朔日五回目

   Posted by: fumi Tags: ,

今年と同じ、デロールが火事で燃えた5年前の2月1日も金曜日でした。

この記事を書くためにブログを読み返すと、2011年から今日2/1にデロールのことを書き始めていました。

・20120201:如月朔日四回目
・20110201:如月朔日三回目

その都度、新しい発見があったように、今年もひとつの記事に出会いました。
火事から半年が経った2008年11月14日に書かれた、ニューヨーク・タイムズ。

・20081114:NYTImes.com “From Ashes, Reviving a Place of Wild Dreams”

初めて知ったのは、フランス軍との関係。
煙の匂いで火事に気がついたのは、パトロール中のフランス軍兵士であったこと。更に焼けてしまった剥製や什器などの保管場所として、軍が施設を提供したことなどが記されています。

軍だけではなく、多くの人々に愛されていることもまた。
デロールのオーナー、Prince Louis Albert de Broglieの言葉を記事から引用します(簡単に訳してみました)

“Deyrolle was the place in Paris you’d first come as a child, then later bring your friends, then your fiancée, then your own children and your grandchildren,” Mr. de Broglie (pronounced duh-BROY) said. “How could people close their eyes and let it disappear? It would have been impossible.”

“デロールは、パリの子供が初めて訪れる場所。その後も、友達を連れて来る、フィアンセと来る、自分の子供と来る、孫と来る場所。目を閉じて、デロールが無くなるがままにすることは不可能だ。”

この言葉を辿るように文章は続きます。
文化大臣がフランス各地の美術館に古い木製陳列ケースをデロールに寄付できないか声をかけた。エルメスがチャリティのスカーフを販売した。更には、あるフランス人女性は蝶の標本を50箱寄贈、またあるフランス人男性は、デロールで数ヶ月前に購入した雄牛の頭を店に返すことで寄贈としたなど、市井の人々の行動も語られています。

他にも、ニューヨーク・タイムズらしいところでしょうか、デロールのためにアメリカ税関の目をかわす話や、オレゴンの博物館キュレーターのエピソードなど、デロールとアメリカのエピソードなども。

自分の行動が気になり、2010年より前に火事について触れていたのかと辿ってみたら、火事から半年後に初めてお店を訪れた日のことを、関心空間に書いていました。今、読むと恥ずかしいものですが、それでも何でも書いておくもんだなと思わずにはいられません。

・20080920:やっと逢えたね

5
11月

三尺下がって、師の影踏まず

   Posted by: fumi

敬愛するブログ「天文古玩」の玉青さんが、拙ブログから2つの記事に触れてくれました。こんなに嬉しいことはありません。

・20121103 天文古玩:休日はデロールへ(附・国書刊行会からの挑戦状)

触れてくれた記事、ひとつは9/13、デロールの店内バーチャルツアーに関する「Visite virtuelle de Deyrolle」 もうひとつは10/11に記した、驚異の棚を模した国書刊行会の小冊子を紐解くエントリー「国書刊行会40周年記念小冊子 私が選ぶ国書刊行会の3冊 その後」です。

・20120913:Visite virtuelle de Deyrolle
・20121011:国書刊行会40周年記念小冊子 私が選ぶ国書刊行会の3冊 その後

玉青さんは、書かれた記事の中で、私の名前を「Tizit 」と記してくださっています。これは、私がユーザーとして参加しているサイト「関心空間」でのみ使っているハンドルネーム。「参加している」と言っても、すっかり御無沙汰してしまっているので、自分でも何故そのユーザー名にしたのか忘れかけていました(笑) そんな健忘症の自分のためにも、ここに由来を書き留めておこうかと。

『2001年宇宙の旅』のHAL9000がIBMを1文字ずらして名付けられたという説(キューブリックは否定したなど、諸説ありますが)と同じ命名ルールによって作られた名前です。ずらした文字数は後ろに3つ。つまり、前に3つ戻ると「Qfwfq」 御存知の方には御存知、イタロ・カルヴィーノの『レ・コスミコミケ』や『柔らかい月』に登場する謎の老人です。「三尺下がって、師の影踏まず」というか、いや、3歩(3文字)後ろの距離で追いかけられるような人では無いのですが、無理を承知で、あんな爺さんになりたいなぁという願望からのことでございます。

師といえば、勝手ながら玉青さんを師と想う気持ちも。
これからも色々、お教え頂きたく。よろしくお願いします。

9/20に記した、驚異の棚を模した国書刊行会の小冊子を紐解くエントリー「国書刊行会40周年記念小冊子 私が選ぶ国書刊行会の3冊」 その表紙に描かれた驚異の棚の同定調査、その後のその後です。

簡単にこれまでの経緯を。
まずは9/20の最初に記したエントリ−。これに対して、敬愛する博物系ブログ「天文古玩」の玉青さんからコメントを頂きました。

・20120920:国書刊行会40周年記念小冊子 私が選ぶ国書刊行会の3冊

そのコメントから新たに出自が判明したオブジェについて記したのが、10/11のエントリー。

・20121011:国書刊行会40周年記念小冊子 私が選ぶ国書刊行会の3冊 その後

このエントリーに対して、かんざきしおんさんから新たに4点のオブジェに対するコメントを頂きました(ブログへの反映が遅れ、失礼しました)

ということで、今回のエントリーは、そのかんざきしおんさんのコメントに対する調査報告から。
調べたところ、残念ながら教えて頂いたものが、国書の小冊子に掲載されているものと全く同じではありませんでした。しかし、そこから検索のヒントを得て、わかったことがあります。

まずは、今回の全ての発端、国書刊行会の小冊子『国書刊行会40周年記念小冊子 私が選ぶ国書刊行会の3冊』の装丁を(画像クリックで拡大します)

国書刊行会40周年記念小冊子 私が選ぶ国書刊行会の3冊

今回、かんざきさんから教えて頂いたなかから、まずは棚番号18の石膏像(鼻・耳・口)
これはおそらく、ミケランジェロ作、かのダビデ像のパーツではないかと。
調べ始めて最初にひっかかったのが、大英博物館が作ったという目・鼻・耳・口の4点。

・Quirao.com: David Nose (by Michel-Angelo) 19 cm by British Museum

David Statue Parts (this image from Quirao.com)

確かに形は似ていると思い、調べを進めたところ、更に大きな画像を見つけ確信を強めました。

・石膏像ドットコム: ダビデ像の鼻
・石膏像ドットコム: ダビデ像の口

ダビデ像の鼻・口(石膏像ドットコムより)

2つめは、棚番号33の貝の化石。
かんざきさんからは「スカシカシパン」と教えて頂きました。私は「タコノマクラ」と思っていました。スカシカシパンは、タコノマクラ目カシパン亜目スカシカシパン科。タコノマクラは、タコノマクラ目タコノマクラ亜目タコノマクラ科。仲間ではありますが、科が違うもの。
ここで今一度、小冊子の画像を眺めると、中央下部に縦長の開口部が。これを頼りに調べたところ「キーホールサンドダラー」ではないかというところまで来ました。ちなみに「サンドダラー」は「スカシカシパン」の英名。ということで、かんざきさんの考えのほうが、より近かったということになります。

しかし残念ながら、小冊子に使われているキーホールサンドダラーの出自の発見までには至りませんでした。

3つめは、棚番号36の昆虫。
かんざきさんから「サカダチコノハナナフシ」と教わりました。教えて頂いたリンクを辿ると確かに。しかし、これまた小冊子との同定までには至りませんでした。

しかし、その過程で見つけた素晴らしいアート作品が。アーティストのJennifer Angusによる標本を題材とした作品の数々。イスラムのタイルを想起させるような、円を中心に幾何学的に配置された虫達(サカダチコノハナナフシも使われています)の美しさ。

・FiberARTS: The Work of Jennifer Angus:A Closer Look

The Work of Jennifer Angus: A Closer Look (this imege from FiberARTS)

Jennifer Angus 自身のサイトもありますので、こちらも。ウィスコンシン大学のデザイン学科の教授だそうです。

Jennifer Angus

最後、4つめも同じく棚番号35の蝶。
「ヒメジャノメ」とコメントを頂きましたが、眼状紋と縦に走る白色帯の位置関係が逆になっているところが気になっています(だからといって、じゃぁ何なのかと特定出来る知識を持ち合わせていないところが情け無いのですが) 更なる調査を続けたいと思います。

ということで、それでもひとつ、石膏像の出自は判明したと言ってもよいでしょう。かんざきしおんさん、ありがとうございます。