Archive for 5月, 2013

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5月

I’ll See All – 04

   Posted by: fumi    in Book&Magazine

高山宏さんの講演会「アーサー・ミーと知の愉しみ」を前にしての脳内整理も、そろそろおしまい。最後の話題は他の人物や作品に見られるアーサー・ミーの影響について。今回は海外編。

ひとつめは、先の記事でも触れた、アンドルー・クルミーの『ミスター・ミー』
高山さんが東大の『UP』2009年1月号で「こんなミーイズムなら大歓迎だ」というタイトルで、この「ミスター・ミー」はあの「アーサー・ミー」だと述べた一冊。

東京創元社:アンドレ・クルミー『ミスター・ミー』

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アンドレ・クルミー『ミスター・ミー』

ふたつめは、イギリスの画家、Paul Rumsey (ポール・ラムゼイ) 画家・イラストレーターなど、世界中のアーティストを紹介されているブログ「traveling with the ghost」にて、その存在を知りました(ちなみに、リアルタイムで知った時のブログは「旧館」ではなく本館でした)

20090626: traveling with the ghost (旧館 Old) : Paul Rumsey

サイトから紹介文を引用させてもらいます。

Paul Rumsey (ポール・ラムゼイ)
1956年エセックス(Essex)生まれの画家。

小学生の頃は学校に馴染めない劣等生で反抗的な態度をとっていたらしい。
自分の寝室には、アーサー・ミーが編集した『イギリス児童大百科』の1930年代からのものが10巻あり、その中の神話や妖精譚や歴史や動物や絵画や彫刻に関した7000を超えるイラストは、驚きに満ちた世界をラムゼイに垣間見せてくれ、幼い頃はこの本を見ることに多くの時間を費やしたのだそうだ。

こちらの記事の最後に参考として記されているように、この文章はPaul Rumsey本人のサイト、またイギリスにあるChappel Galleriesのウェブを翻訳されたものだと思います。

Paul Rumsey: Autobiogrpahy

Chappel Galleries: Paul Rumsey

作品は、『イギリス児童大百科』の神話や妖精譚に惹かれたという言葉を証明するかのように、現実とは一線を画した世界観で描かれています。

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Paul Rumsey: Library Head (from “The Paul Rumsey Homepage”)

 

最後は高山さんの著書『殺す・集める・読む』でも語られているシャーロック・ホームズ。私個人としても小学生の頃に新潮文庫の延原訳を手にして以来のファンです。
そのシャーロック・ホームズの現代版として2010年・2012年に製作されたBBCのドラマ『SHERLOCK』に『The Children’s Encyclopedia(イギリス児童百科)』が登場していることを知った時の驚きと喜びたるや。情報元はtumblrの「Sherlock’s Danger Night」

Sherlock’s Danger Night: Sherlock has 4 volumes of The Children’s Encyclopedia by Arthur Mee on his bookshelf

 

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Sherlock has 4 volumes of The Children’s Encyclopedia by Arthur Mee on his bookshelf (from Sherlock’s Danger Night)

 

このシーンは、シーズン1 の エピソード2(S1E2)『The Blind Banker』 犯罪の鍵に本が使われているということで、シャーロックが自宅の本棚を探るシーン。イギリスでの評判を知り、2011年6月にamazon.co.ukからDVDを購入。それ以来、何度も見ているにもかかわらず、全く気づきませんでした。しかし、それもそのはず。このtumblrを見て、改めてDVDを確認したのですが、私の環境のせいか、それともブルーレイでないとダメなのか、『The Children’s Encyclopedia』の書名を判読出来るほどの画質を得られず。この眼ではっきりと見たかった。

とはいうものの、その背表紙からいつの時代の『The Children’s Encyclopedia』なのかは、検討がつきました(『The Children’s Encyclopedia』は、版を重ね長年出版され続けているので、装丁の異なるものが幾つも存在するのです)amazon.co.ukに出品されているもので、1950年にThe Educational Book Companyから出版されたもののようです。

amazon.co.uk: The Children’s Encyclopedia Vols. 1 – 10

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The Children’s Encyclopedia(The Educational Book Company)

犯罪推理の中に百科を目指すシャーロックが、子供向けの百科事典を今でも本棚に収めていることに感慨を覚えます。幼少期には、これを兄のマイクロフトと共に眺めていたのでしょうか。1950年の版ということは、シャーロックの両親が持っていたのを譲り受けたのかもしれません。もうひとつの謎は、全10巻のなかで何故4巻しか本棚に並んでいないのか。これまた、マイクロフトが残りの6巻を持っているのか。聖典同様に、推理・妄想が膨らみます。

ちなみに、この本棚のシーンで最初にシャーロックが手にする本が『Concise Oxford English Dictionary(COD)』高山さんといえばの本家『Oxford English Dictionary(OED)』とはいきませんでしたが、ここから『The Children’s Encyclopedia』が登場する僅か数十秒の間に、シャーロック – 高山宏 – アーサー・ミーの連関を想うのでした。

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Concise Oxford English Dictionary in SHERLOCK S1E2 “The Blind Banker”

 

 

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5月

I’ll See All – 03

   Posted by: fumi    in Book&Magazine

やっと、私にとってのアーサー・ミー(Arthur Mee)と高山宏さんの繋がりに辿り着けそうです。その始まりは、もう一人の「宏」から。

私がアーサー・ミーの存在を知ったきっかけは、高山さんと並び敬愛する、もう一人の「宏」 荒俣宏さん。記憶は朧げですが、前後の状況を鑑みると、おそらく2005年か2006年のこと。紀田順一郎さんとの共著『コンピューターの宇宙誌- きらめく知的探求者たち』(ジャストシステム 1992)を、何気なく読んでいた時でした。

 

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紀田順一郎・荒俣宏『コンピューターの宇宙誌―きらめく知的探求者たち』

失礼ながら、紀田さんよりも荒俣さんありきで読み始めたのですが、アーサー・ミーについて語っているのは実は紀田さんのほう。その登場シーンを引用します。

イギリス人は博物館そのものが好きなのではないかなと思います。その理由はいろいろあるんですが、一つは『I・SEE・ALL』という、絵で見せる事典がありますね。あれを前に見ておりましたら、poetry(詩)をどう絵で表現しているのかと気になりまして。

中略

編者のアーサー・ミーという人は、I travelled among unknown men というワーズワースの詩を、自分でタイプでうって写真に撮って掲載しているんですよ。おりにふれて考えるんですが、これはpoetryの絵として正解じゃないかと思うんです。(74ページ)

 

実際に『I・SEE・ALL』で「Poetry」を引いてみますと、当たり前ですが、確かにその通り。

20130501_poetry

I・SEE・ALL: Poetry

 

それからは折りを見ては『I・SEE・ALL』を手に入れようとネットで検索。そうして2007年2月、神保町・明倫館書店のサイトに名著普及会による復刻版の『I・SEE・ALL』が出ているのを知り、すかさず電話。タクシーに飛び乗り入手したのでした(上の画像もそれ。ちなみに、今でも当時のオリジナルが欲しい気持ちは持ち続けています。)

それから約2年。ようやく高山さんとアーサー・ミーの繋がりを知ったのは2009年。「アーサー・ミー」で検索して出会ったブログ「忍法影縫いの術」

20090106 忍法影縫いの術:ミーイズム

アンドルー・クルミーの『ミスター・ミー』について語られる中に、高山さんが東大の『UP』2009年1月号で「こんなミーイズムなら大歓迎だ」というタイトルで、この「ミスター・ミー」はあの「アーサー・ミー」だと述べていることを知ったのです。

これはオリジナルに当たらねばと、後日、東大へバックナンバーを買い求めに行ったところ、品切れで買えず。ならばと国会図書館へ赴き、ようやく全文に目を通すと、今度はその中でユーリカ・プレスから『Children’s Encyclopedia(イギリス児童大百科)』が復刻されたこと、その解説を高山さんが書かれていることを知り、その場ですかさず閲覧申請。

ユーリカ・プレス:アーサー・ミー編集『イギリス児童大百科』

更にその連載が羽鳥書店から連載タイトルそのままに『かたち三昧』として2009年7月に出版。実際に購入したのは、2010年2月、あの「羽鳥書店まつり」の会場だったことも、今という位置から振り返ると非常に感慨深いものがあります。

羽鳥書店:高山宏『かたち三昧』

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高山宏『かたち三昧』(後ろにArthur Mee『I・SEE・ALL』)

 

しかし、これよりも遡ること10年以上も前に、高山さんがアーサー・ミーについて触れられているのを知ることになるのはもう少し後の話。『かたち三昧』と同じ、羽鳥書店から2011年11月に出版された『新人文感覚2 雷神の撥』

羽鳥書店:高山宏『新人文感覚2 雷神の撥』

この中に収められた『ユリイカ』1997年9月号「あまりにもボヘミアン-ルイス・キャロル考」の中に「希代の教育出版人」という冠を持って、アーサー・ミーの名が登場しています(ちなみに、先に記したユーリカ・プレス復刻の『Children’s Encyclopedia(イギリス児童大百科)』に寄せられた解説も、この『雷神の撥』に収録されています)

さぁ、これまでの整理が出来ました。もちろん、私が知らないだけで他にも書かれているものがあるやもしれません。失礼を承知で、今回の講演会の席で教えを請うことが出来ましたら。

 

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