12
4月
不在の在
6月に期限の来る国立博物館年間パスポートのスタンプ空白が3つ。これはさすがに東博だけでは賄いきれないと思っていたところに,降って湧いた上洛の機会。それならば,せっかくだからと更に南下。
奈博「国宝 鑑真和上展」。
静かに坐す鑑真和上の閉じた瞼の内を見つめていると,この世界には音というものがそもそも存在していなかったかのような幽寂感。暫しの時が流れ,我に返るのは自らの足音。左右に廻り,それぞれに異なる表情も拝顔。紺紙金字好きにはたまらない法華経も食い入るように。
帰路,依水園・寧楽美術館を経て興福寺。
国宝館にて阿修羅像の不在を守るのは,ガラスケースの横幅一杯に並べられた板彫十二神将像中の八神。普段は二から三神ということで,初めて見るものも幾つか。「留守は俺達にまかせとけ」と言わんばかりの闊達な姿態にも自然と笑みがこぼれる。
とは言え,あるべきところにないものへ馳せる気持ちも拭い切れず。不在ゆえに,その存在を強く想うのは人だけに非ずということか。
上野で逢ったら,八神の頑張りを伝えよう。