15
9月
剥製標本は二度,息を引き取る
過日,知人宅にて利きチーズの宴。
集いし中にパリからのお客人。
何か話さねばと自分の中にある彼の都市への知識から精一杯に振り絞って選んだ会話の発端。
「いつかはデロールに足を運びたいんです」。
ただパリというだけでお客人の背景も知らずにいきなりそれかよ。当たらずとも遠からじ,自分が「アキバのメイドカフェに行きたいんです」と言われるようなものじゃないだろうか。ところが,これはやっちまったかと身構える間も無く,先方から放たれた言葉に我が耳を疑った。
「デロール,火事で焼けたんですよ」
これほどの寝耳に水もあったものかと。調べると,オフィシャルのサイトにしっかりと記載されている。しかも半年以上も前の2月のこと。アンテナにもRSSにも登録していないからこんなことになるんだよ…。
馴染みの無いフランス語をgoogleに頼んで英語へと訳してもらい(日本語訳はさすがに超訳が過ぎて),事の次第を追いかける。
原因は漏電,出火場所である2階はほぼ全焼。写真では2階の窓から外に向かって勢いよく伸びる炎,また黒く焦げた部屋の様子なども事細かに窺える。そして,その部屋には焼けただれた剥製標本の姿。永遠のはずであった命を失ったその行き先は?。遅きに失したどころか何ら接点もないことを承知で,廃棄するくらいならくれ。
幸いにも修復は進んでいるらしいが,依然作業中の部屋も幾つか。
こりゃね,やっぱりね…。