Posts Tagged ‘Halle’

きっかけは、2つのオブジェ。

Milano - Castello sforzesco - Diavolo-automa di Settala - Foto Giovanni Dall'Orto - 6-1-2007 - 02

"The Chained Slave" - this image from Wikimedia Commons

Ivory Carving - this image from "Cabinets of Curiosities"

先週、国書刊行会40周年を記念して作られた小冊子『私が選ぶ国書刊行会の3冊』を入手。

国書刊行会40周年記念特設サイト

国書刊行会40周年記念小冊子 私が選ぶ国書刊行会の3冊:表紙

作家・学者等、各界著名人61名が、それぞれに愛する国書刊行会の出版物3冊を選び語る小冊子。しかし、表紙を開き本文へと進むその行く手を阻まれ、目が離せなくなってしまったのが、ヴンダーカンマーを想起させる装丁。国書刊行会40周年にふさわしい驚異の棚。

そこで見覚えのあったのが、先に挙げた2つのオブジェ。イタリア・悪魔のオートマタ「The Chained Slave」と、ドイツ・Dresden Collectionの象牙の塔。これらを目にしたのは、 ヴンダーカンマーを扱った書籍の代表的な一冊。Patrick Mauriès『Cabinets of Curiosities』

Patrick Mauriès『Cabinets of Curiosities』

本棚から本書を取り出し確認すると果たして、記憶の通り、2つの図像が見つかりました。こうなると、他のオブジェの出処も調べたくなるのは、博物好きとして必然の流れ。国書刊行会からの愉しい贈り物であり、また厳しい試験でもあるという気持ちで事に臨みます。

国書刊行会40周年記念小冊子 私が選ぶ国書刊行会の3冊:ナンバリング

まずは下準備として、表紙・裏表紙・背表紙をスキャンし、各棚毎にナンバリング。ひとつの棚に複数のオブジェが収まっているところもあります。
ここから実作業。手始めとして当たりをつけたのは、同じ『Cabinets of Curiosities』からの引用の可能性。1ページずつ捲っては小冊子と見比べていったところ、先の2点とあわせて8点。調べる過程で気がついたのですが、その中のひとつである鰐の標本(棚番号16)は、ドイツ・ハレのヴンダーカンマー。2006年12月に現地を訪れた際に撮影した写真を引っ張りだすと、しっかり写っていました(つまり、自分では忘れていたということでもあり…)

20061215 Halle, Germany

『Cabinets of Curiosities』を一冊通して見終わり、さて、次はどうしようかと思いながら小冊子を眺めると、見覚えのある書影(棚番号26)。他のオブジェとの縮尺のバランスの違いで油断したが、これは間違いなくヴォイニッチ手稿。更にもうひとつ。額装された髑髏の絵(棚番号11)は、明らかに歌川国芳「相馬の古内裏」 これら2点が加わり、10点判明。

続いて、この装丁を手がけた人にヒントはないかと、小冊子の奥付を眺めます。その人は山田英春氏。『巨石―イギリス・アイルランドの古代を歩く』の著者として存じ上げていましたが、調べるとバーバラ・M・スタフォード・著 / 高山宏・訳『ボディ・クリティシズム』の装丁も。期せずしての高山さん繋がり。
ブログを拝見すると、目に飛び込んだトップの画像が、まさにこの驚異の棚に収められている壜(棚番号8。但し、これらの壜が何処のものかまでは探すことは出来ず) また、鉱石の断面や、人形の頭部などもブログの画像から見つけることが出来ました。これで13点。

しかし、ここで手詰まり。手持ちのヴンダーカンマー関連書籍を数冊捲ってみましたが、類似するものは見つけられず。こうなると、googleに頼るしかありません。スキャンした表紙・背表紙・裏表紙から、オブジェをひとつひとつ切り出しては、googleのイメージ検索に放り込み。

そうして見つかったのが21点。これまでに見つけていたものと合算すると33点。数え方にもよりますが、装丁の中に陳列されているオブジェの数は約60点。100点満点換算にすると、試験の結果は55点。ギリギリ及第点に達せずの落第。ヴンダカーカンマー定番の鰐の剥製(棚番号2)や、七福神と思しき宝船(棚番号29) 流し目の赤い面(棚番号11)などは判るかなと思っていたのですが… さすがに国書刊行会の壁は高く厚かったです。

とはいえ、この遊びの中で初めて知ったことも多く。オブジェ自体の名称・出自はもちろん、その作者や収蔵されている施設やショップは、今後の好奇心を更に広げるものとなりました。

最後に知り得たオブジェの出処の対応をまとめておきます(数字は棚番号)。もちろん間違いが無いとは言えませんので、発見されましたらお知らせいただきたく。速やかに訂正します。また知りえなかったオブジェについても、インターネットの集合知に頼りたいところ。ご存知の方がいたらお教えくださいませ。

1. 胸像 – Manfreddo Settala “The Chained Slave”
3. ノコギリザメ – Blog: Ragland Hill Social
5. 子供の頭部と歯車:頭部 – 山田さんのブログより、メキシコの画像
5. 子供の頭部と歯車:歯車 – 橋本時計店
6. 水晶:白 – Wikimedia Commons
7. アンモナイト – Wikimedia Commons
8. 薬瓶 – 山田さんのブログのトップ画像
9. 青い鎖のブローチ – Georg Laue
9. 婦人写真 – Sun Frame with Woman
Loud Flowerというバンドのアルバム『Happy Now』のジャケ写にも使われています – Loud Flower『Happy Now』
11. 額装された髑髏の絵 – 歌川国芳「相馬の古内裏」
11. 赤い箱 – Halle Collociton Cabinets of Curiosities 27
11. 馬の頭骨 – Bone Clones
12. 歯車オブジェ – 都筑道夫『幽霊通信』 装丁:山田英春
13. 骸骨 – Paul Reichel “Tödlein-Schrein” 1580 『Cabinets of Curiosities』では1555年と記されている
15. 家族の肖像写真 – The Denver Post
16. 鰐のホルマリン漬 – Halle Colleciton
16. 茸の博物画 – Common Mushrooms of the United States
17. 男性の立像 – Ercole Lelli Flayed Man
20. 見開きの本 – The Book of Accidents
20. 紐綴じ本 – William Hoiles Picture of old books. Basking Ridge Historical Society
21. 眼球望遠鏡 – Corning Museum of Glass: Optical Model of the Eye
22. ガラスケースに入った髑髏 – Nautilus
25. 鉱石断面:大 – 山田英春『たくさんのふしぎ 石の卵』
25. 鉱石断面:小 – 山田さんのサイト「亀甲石」
26. 赤玉枠のレリーフ – Johann Georg Haintz “Cabinet of Curiosities” 1666
26. ヴォイニッチ手稿 – Wkimedia Commons
27. 石版渦 – Lucca Labyrinth
30. タロット – Charles VI (or Gringonneur) Deck; Le tarot dit de Charles VI
31. 象牙の塔 – Dresden Colloction
33. 赤玉の飾り – Johann Georg Haintz “Cabinet of Curiosities” 1666
34. 珊瑚 – Ferdinand II’s cabinet at Schloss Ambras, Innsbruck, Austria
36. 箱 – Michel Mann Box (Nuremberg, around 1600)
41. 裸体 – Nautilus

Tags: , ,