四十六灯
位置について
毎年恒例の落語協会「圓朝まつり」(今年から「落語協会感謝祭~圓朝記念~」)に泣く泣く背中を向けて,北へと走る新幹線に乗る。
その代わりと言っては失礼だけど,旅の友は圓朝特集の『東京人』最新9月号。お目当ては喬師が巡る圓朝ゆかりの町歩き。谷中・根津・日暮里・湯島,見覚えのある場所に立つ師の姿が嬉しくもあり,それでいて奇妙でもあり。天神さんの茅の輪をくぐる後ろ姿が可愛い(そして暑そう)。
現地到着後,酒も呑まず,明日に備えて早寝。
DJ Kyon
時事通信ホール 14:30~15:30
大銀座落語祭「柳家喬太郎におまかせの会」
開口一番,「柳家喬太郎に丸投げの会にようこそ」。内容について主催者側から全く注文がなかったそうで。となると,話すのか?,それとも歌うのか?(笑)。丸投げの60分をしかと見届けようとする会場の期待感はいやがうえにも高まる。
「柳家の修行は『道灌』から始まり,『子ほめ』,『初天神』といったような噺を習っていくわけですが」という振りからまず始まったのが『子ほめ』。しかし,今までに聴いたことのない早い口調で物語が進む。60分あるのに?,なぜそんなに急ぐの?。一体,何をしようとしているのかわからないでいるうちに,八っつぁん,子ほめに失敗。しかし,そこで噺終わらず,すかさず父親の竹さん,ご隠居のところに生まれた赤ん坊の名前をつけてもらいに。そこでご隠居考えて,ひねり出した名前が寿限無寿限無五劫の…。
大きくなった寿限無君に叩かれてこぶをつくった子供が家に帰ると,父親が羽織を着て初天神に出かけようとしている。上手いことついていくことが出来,あれ買ってこれ買ってと言いながら最後に凧揚げをしていると酔っ払いとぶつかる。謝る親子に悪態をつきながら酔っ払いが家に帰ると,まさに奥さんと子供が出て行くところ。
別れてから三年。酒もやめ心を入れかえたおかげもあって,鰻屋の二階で親子三人仲直り。そこに,木場へ一緒に行くはずだった番頭が現れ,旦那の義太夫を聴きにきてくれと頼む。しかし,やっと親子三人暮らせるようになったんだからと断られ,それを店に戻ってしぶしぶ旦那に報告。すると旦那,「今日は特別に店の者に聞かせよう。皆,どうしてる?」。あいつは駄目,あいつも駄目と言ううち,何番目かに「文七はどうだ?」。その頃,文七は掏られた五十両の金を苦に吾妻橋の上から身投げをしようとしていた…。
左官の長兵衛から貰った五十両が縁で,その娘,お久と結婚した文七。二人で元結屋を開き商売も繁昌,更には子宝にも恵まれる。その子に名前をつけなければということで文七が向かったのはご隠居の家…。
子ほめ-寿限無-初天神-子別れ(子は鎹)-寝床-文七元結-寿限無
噺の終わりと始まりが淀み無く見事に繋がり,客席からはその移行に気付く度に驚きと喜びに満ちた歓声と拍手が湧き上がる。口演であるからにはメドレーと表現すべきかと思いつつ,実はセットリストのほうがあってるんじゃないかと。
そんな終わること無き多幸感を覚えたノンストップ60分。鳴り止まない拍手の中,和服姿のDJは脱いだ羽織を抱えながら何事も無かったかのように袖に消えていきました。
天に兎 地にも兎
一月二度の満月
その後者
芳年と義経に出迎えられて再びの一夜
時折,霧雨は降るものの,昨年と比べれば雲泥の差
叢雲の背後に輝く姿を望むこと四度五度
その光を浴びたお水をいただき,蝋燭の灯りに想いをこめる
儀の合い間に初対面の地元男性二人と語らい
「この前,○○○で逢いましたよね?」
行ったことも聞いたこともない現地のギャラリー
なんとなく,この夜を得心
お礼まいり 六段目
お礼まいり 五段目
時期が早く,残念ながらタラの芽はまだ小さくて採るには忍びなし
しかし,その代わりに登場したのは別口の宝物
タラの芽と双璧をなすと言われる(らしい)コシアブラ
「らしい」ってのは,教えを受けた今の今まで,その存在を知らなかったから
(っつーか,親類縁者もここ二・三年の間に初めて知ったようで,それくらいタラの芽のほうが珍重されていたということかと)
芽の付き方はタラの芽と同じ,枝先に緑色
これをタラの芽よりもちょっと開いたくらいの時にポンと採るのが良いそうで
調理方法はオリーブオイルでさっと揚げ
これを塩にちょいとつけてほおばります
サクッ
うまっ
うまっ!
芽が開いて広がった分,タラの芽よりは軽い口当たり
タラの芽の自然がギュッと詰まったあの感じ,そしてコシアブラの爽やかなこの感じ
あぁ,出来ることなら両者の食べ比べをしたかったよ