高山宏さんの講演会「アーサー・ミーと知の愉しみ」を前にしての脳内整理も、そろそろおしまい。最後の話題は他の人物や作品に見られるアーサー・ミーの影響について。今回は海外編。
ひとつめは、先の記事でも触れた、アンドルー・クルミーの『ミスター・ミー』
高山さんが東大の『UP』2009年1月号で「こんなミーイズムなら大歓迎だ」というタイトルで、この「ミスター・ミー」はあの「アーサー・ミー」だと述べた一冊。
ふたつめは、イギリスの画家、Paul Rumsey (ポール・ラムゼイ) 画家・イラストレーターなど、世界中のアーティストを紹介されているブログ「traveling with the ghost」にて、その存在を知りました(ちなみに、リアルタイムで知った時のブログは「旧館」ではなく本館でした)
・20090626: traveling with the ghost (旧館 Old) : Paul Rumsey
サイトから紹介文を引用させてもらいます。
Paul Rumsey (ポール・ラムゼイ)
1956年エセックス(Essex)生まれの画家。小学生の頃は学校に馴染めない劣等生で反抗的な態度をとっていたらしい。
自分の寝室には、アーサー・ミーが編集した『イギリス児童大百科』の1930年代からのものが10巻あり、その中の神話や妖精譚や歴史や動物や絵画や彫刻に関した7000を超えるイラストは、驚きに満ちた世界をラムゼイに垣間見せてくれ、幼い頃はこの本を見ることに多くの時間を費やしたのだそうだ。
こちらの記事の最後に参考として記されているように、この文章はPaul Rumsey本人のサイト、またイギリスにあるChappel Galleriesのウェブを翻訳されたものだと思います。
・Chappel Galleries: Paul Rumsey
作品は、『イギリス児童大百科』の神話や妖精譚に惹かれたという言葉を証明するかのように、現実とは一線を画した世界観で描かれています。
最後は高山さんの著書『殺す・集める・読む』でも語られているシャーロック・ホームズ。私個人としても小学生の頃に新潮文庫の延原訳を手にして以来のファンです。
そのシャーロック・ホームズの現代版として2010年・2012年に製作されたBBCのドラマ『SHERLOCK』に『The Children’s Encyclopedia(イギリス児童百科)』が登場していることを知った時の驚きと喜びたるや。情報元はtumblrの「Sherlock’s Danger Night」
このシーンは、シーズン1 の エピソード2(S1E2)『The Blind Banker』 犯罪の鍵に本が使われているということで、シャーロックが自宅の本棚を探るシーン。イギリスでの評判を知り、2011年6月にamazon.co.ukからDVDを購入。それ以来、何度も見ているにもかかわらず、全く気づきませんでした。しかし、それもそのはず。このtumblrを見て、改めてDVDを確認したのですが、私の環境のせいか、それともブルーレイでないとダメなのか、『The Children’s Encyclopedia』の書名を判読出来るほどの画質を得られず。この眼ではっきりと見たかった。
とはいうものの、その背表紙からいつの時代の『The Children’s Encyclopedia』なのかは、検討がつきました(『The Children’s Encyclopedia』は、版を重ね長年出版され続けているので、装丁の異なるものが幾つも存在するのです)amazon.co.ukに出品されているもので、1950年にThe Educational Book Companyから出版されたもののようです。
・amazon.co.uk: The Children’s Encyclopedia Vols. 1 – 10
犯罪推理の中に百科を目指すシャーロックが、子供向けの百科事典を今でも本棚に収めていることに感慨を覚えます。幼少期には、これを兄のマイクロフトと共に眺めていたのでしょうか。1950年の版ということは、シャーロックの両親が持っていたのを譲り受けたのかもしれません。もうひとつの謎は、全10巻のなかで何故4巻しか本棚に並んでいないのか。これまた、マイクロフトが残りの6巻を持っているのか。聖典同様に、推理・妄想が膨らみます。
ちなみに、この本棚のシーンで最初にシャーロックが手にする本が『Concise Oxford English Dictionary(COD)』高山さんといえばの本家『Oxford English Dictionary(OED)』とはいきませんでしたが、ここから『The Children’s Encyclopedia』が登場する僅か数十秒の間に、シャーロック – 高山宏 – アーサー・ミーの連関を想うのでした。
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