24
2月

Tree of Codes

Jonathan Safran Foer "Tree of Codes"

2月上旬、Tower Records渋谷店にて、Jonathan Safran Foer『Tree of Codes』を購入。

・Visual Editions: Jonathan Safran Foer “Tree of Codes”

Tree of Codes: 表紙

最初に存在を知ったのは「monogocoro」にて。

・monogocoro: 20101126 本の形をした彫刻(Tree of Codes)

心奪われたのは、もちろんこの文章が切りこまれた姿。しかし、著者であるJonathan Safran Foer(ジョナサン・サフラン・フォア)の名前にも見覚えが。収集癖のある主人公という設定に惹かれて見た映画『Everything is Illuminated(邦題:僕の大事なコレクション)』の原作者でもあり。どちらかひとつでも購入を検討する理由となるのですが、それがふたつとなると問答無用。本のジャンルとしてはどういったものなのか、どうしてページがカットされているのかといった背景を全く調べることなく、ただただこの目で見たい、手で触れたい。

しかし、購入への行動には大幅遅刻。昨年12月半ばにamazon.comでオーダーしたところ、発送は1ヶ月後とのアナウンス。ところが、実際に1ヶ月経った今年1月半ばになって、発送は3月になるとの再通知。待つかキャンセルするかの選択を問われているところにタワレコのツイートで入荷を知り、即座に電話。無事に入手となりました。

あとがきから本を読む癖で、まずは裏返し。すると裏表紙に推薦文と思しき文章。読み進めて最後に記された名前に辿り着くと、そこにはOlafur Eliasson(オラファー・エリアソン)と。ここでその名前を目にするとは。2人の関係までは知りませんが、更に期待は高まります。

Tree of Codes: 裏表紙(オラファー・エリアソンのコメント)

あとがきに目を通すと、Bruno Schulz(ブルーノ・シュルツ)『The Street of Crocodiles』の文章を切り抜くことで、新たな物語を創り上げているとの説明。そう、The Brothers Quay(ブラザーズ・クエイ)の『ストリート・オブ・クロコダイル』、その原作。何だか、これまでに見聞きしたことのひとつひとつがパズルのピースのようにはまって一冊の本になったかのよう。

切り込まれて作られた文章の簡単な一例を。

一番最初に上げた画像では「whole generations wore his mask.」となっています(文法的に気になるのですが、それは後述)。またそのように個々の単語が重なってひとつの文章になっているものに加え、下記の画像のような2つのページに跨って1つの単語になっているものも。上のページの「keyboard」と下のページの「less」が繋がって「keyboardless」

Tree of Codes: 言葉の繋がり

眺め触れているだけでも既に満足なのですが、そこに物語があるとなると少しでも知りたいと思う気持ちもフツフツと。そこで実際に十数ページ読み進めてみましたが、これが思いの外、頭に入ってきません。何ページ後ろまで遡ってカットされているのか、何ページ分の言葉が重なってひとつの文章になっているのかといった好奇心からくる理由はもちろんですが、それと同時に惑わされるのは、文章、そして単語そのものの形。

Tree of Codes: 悩ましい文章

カット位置によっては、こんな単語は存在しないだろうと思うものがあり、果たしてこれで正しくカットされているのかと気になっては先に進むことが出来ません。知らない単語があっても、まずは全体を読み通せと言われた受験英語の記憶が蘇ります。このままでは埒があかないので、一度書きだして整形した後に読むと良いのかもしれません。

と、内容にまではまだまだ踏み込めてはいませんが、見る、または所有するだけでも満足の一冊であることには変わりありません。何処かの素晴らしい出版社が邦訳を出してくれることにも期待したいです。

最後に裏表紙に記された出版社であるVisual Editionsの言葉を。

Visual Editions is a London-based book publisher. We think that books should be as visually interesting as the stories they tell; with the visual feeding into and adding to the storytelling as much as the words on the page. We call it visual writing. And our strap line is “Great looking stories.”

これを見た瞬間、牛若丸出版が頭に浮かびました。このような出版社としての姿勢が記された本に惹かれてしまいます。

A message of Visual Editions

10
2月

不忍ブックストリーム 第7回「助っ人さんいらっしゃい!」

昨夜、「第7回 不忍ブックストリーム」の配信を行いました。
今回のテーマは「助っ人さんいらっしゃい!」

不忍ブックストリートの助っ人班からは吉井さん・吉上さん。助っ人さんからは、たけうま書房さん・猪熊さん・三五さん。そしてスカイプゲストとして、助っ人さんを経験されたデイさんが大阪から出演してくれました。

助っ人さんとは何かから始まり、その具体的な活動内容、そして助っ人さんご自身からの体験談んも披露していただきました。

春の一箱古本市の助っ人さん募集も始まっています。

・しのばずくん便り:20110209 助っ人さん募集します!


不忍ブックストリームでは毎回、出演者がお気に入りの一冊を紹介してくれています。配信中にツイートしないことも多いので、これからはリストとして残しておこうと思います(以前のものについても、随時アップするつもりです)

今回、紹介された本はこちら。

吉上さん

『やっぱりおおかみ』 佐々木マキ / 福音館書店

吉井さん

『百万遍 流転旋転』 花村萬月 / 新潮社

たけうま書房さん

『しかたのない水』 井上荒野 / 新潮社
『松嶋×町山 未公開映画を観る本』 町山智浩・松嶋尚美 / 集英社

猪熊さん

『東京映画名所図鑑』 富田均 / 平凡社
『心は孤独の狩人』 カーソン・マッカラーズ / 新潮社

河上さん

『アンダスタンド・メイビー』 島本理生 / 中央公論新社

三五さん

『LOK-MAGAZIN KALENDER 1982』 ドイツの鉄道雑誌の日めくりカレンダー
『プロコフィエフ短編集』 著:セルゲイ・セルゲーエヴィチプロコフィエフ / 訳:サブリナエレオノーラ・豊田菜穂子 / 群像社

個人的には『しかたのない水』と『LOK-MAGAZIN KALENDER 1982』に惹かれました。
前者はスポーツクラブが舞台だそうで、私自身もそこでは色々な体験をしているのでどんなエピソードが描かれているのか興味を覚えました。
後者は見た目がもう…。オレンジの地に黒文字の表紙、モノクロの写真・イラスト・図面、日付の太いフォント(特定するまでの知識は無かった)も効果的なアクセント。不忍の鉄道好きとしても知られる、古書ほうろうの宮地さんの食いつきっぷりも見事でした。

次回の不忍ブックストリームは2/24。
テーマは「羽鳥書店まつり1周年」

昨年2月に駒込大観音光源寺で開かれた、羽鳥書店社長である羽鳥和芳さんの20年分の蔵書を大放出した伝説の古本市。当時の様子は主催された古書ほうろうさん、そしてタグで追える谷根千ウロウロさんのブログを。

・古書ほうろうの日々録:20100112 開催決定!羽鳥書店まつり

・谷根千ウロウロ:羽鳥書店まつりタグ

ゲストはもちろん、羽鳥さんご本人。そして主催された古書ほうろうから宮地さん。あれから1年。当時の様子を振り返っていただくのはもちろん、現在の羽鳥さんの蔵書についても話は及ぶことと思います。

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6
2月

時と場を旅して

旧暦正月も過ぎて、ようやくのあけましておめでとうございます。

春節を祝う台湾から本が届きました。

台北のオンライン古書店「胡蝶書房」さんより、以前から気になっていたドイツのインゼル文庫。その中から貝の一冊を。

・胡蝶書房: Das kleine Buch der Meereswunder (Insel Bücherei Nr.158)

Das kleine Buch der Meereswunder (Insel Bücherei Nr.158):表紙

インゼル文庫(Insel Bücherei)とは、ドイツのインゼル社(Insel Verlag)から1912年に創刊された叢書。現在も続くシリーズですが、胡蝶書房さんが扱っているのは主に1930年代に刊行された自然博物画の描かれたもの。

私が購入した本について、胡蝶書房さんのサイトから引用させていただきます。

原画はドイツの版画家フランツ・ミヒャエル・レーゲンフス(Franz Michael Regenfuß, ca1712-1780)の手になるもの。

おそらくデンマーク王フレデリク五世(Frederik5., 1723-1766)に献呈された”Auserlesene Schnecken, Muscheln und andre Schaaltiere”(「貝と甲殻類精選」)から選定されたのではないか、と思います。

テクストは「蝶の生活」(Das Leben der Schmetterlinge, 1928)などの著作でも知られるドイツの詩人・小説家、フリードリヒ・シュナック(Friedrich Schnack, 1888-1977)。

本を開くと、色鮮やかな海中世界。

索引では当時の学名でしょうか(今とは少し異なるものも)、貝の名称も英・独の2種類で記されています。

Das kleine Buch der Meereswunder (Insel Bücherei Nr.158):画 01

Das kleine Buch der Meereswunder (Insel Bücherei Nr.158):画 03

成長する前のもので且つ完全な形では無いので同定に自信がないのですが、手持ちで似た貝とも一緒に。200年以上前に描かれたものが現代と繋がる。当たり前のように考えてしまいますが、この画とこの本が辿った道、更にはこの貝が辿った道。その双方を想うと奇跡のような出会いです。

Babylonische Turn (Turris babylonia / Pleurotoma Babylonica / ハデクダマキ)

巻末には文章と画の印刷会社の名前。その画の方はH. F. Jütte。京都大学電子図書館に金沢大学が所蔵する「近代教育掛図」から耳の解剖図が見つかりました。「近代教育掛図」自体も知らないものでしたが、これまた魅力的な博物画の数々。

・京都大学電子図書館:近代教育掛図「人体解剖図 耳」(H. F. Jütte, Graph. Kunstanstalt, Leipzig.

・京都大学電子図書館:近代教育掛図

インゼル文庫自体についても興味を惹かれましたので、その他のラインナップをチラ見。ドイツの伝説の奇人、ティル・オイレンシュピーゲルにまつわるものが。岩波文庫の『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』や、『のだめカンタービレ』で登場したシュトラウスの交響詩でも馴染みのあるもの。

ひとつの事象から次から次に関心が広がる楽しみ。

21
12月

耐え忍ぶ不忍ブックストリーム

先週17日(金)不忍ブックストリーム第3回の放送を行いました。まさかのナンダロウさん欠席という困難を乗り切り、無事に終えることが出来ました。

・不忍ブックストリーム:20101217 第3回 「不忍ブックストリートが選ぶ今年の一冊」

テーマは「不忍ブックストリートが選ぶ今年の一冊」。一箱古本市に携わる実行委員・助っ人さん10人が出演し、それぞれが今年もっとも印象に残った一冊(新刊・古書問わず)を自身の言葉で語ってもらいました。

紹介された本のリストは、不忍ブックストリートのブログ「しのばずくん便り」に記しましたので御覧ください。

・しのばずくん便り:20101219 試練の不忍ブックストリーム

私が紹介したのはMartin d’Orgeval『Touched by Fire』。2008年、パリの博物商デロールを襲った火事直後の焼けた店内と標本を収めた写真集です。購入当時、このブログでも紹介したものです。

・tomblin:20091219「Touched by Fire」

日付の通り入手したのは昨年末ですが、今年3月、以前から愛してやまないアイスランドのミュージシャン、ヨンシーがデロールの火事を収めた写真集(この時点では書名が分からず)にアイデアを得てワールドツアーのステージデザインを行ったという報に触れたこと。その後、パリまで足を運んで彼のライブとデロールを両者をこの眼で見たこと。そして、今月になって、ヨンシーが影響を受けた写真集がこの『Touched by Fire』だと分かったこと。1年を通じてこの本の影響下にあり続けましたので、敢えて紹介させていただきました。

この一連の流れは、博物系の別ブログ「Imaginary Beings」に記してきました(偶然にも7日ばかり)

・Imaginary Beings:20100307「Jónsi meets Deyrolle」

・Imaginary Beings:20100607「裏を返す」

・Imaginary Beings:20101207「Sonic Menagerie」

さて、明日22日21:30より今年最後の不忍ブックストリーム。ゲストは、エロ漫画編集者の塩山芳明さんと東京堂書店ふくろう店の畠中理恵子さん。テーマは「忘年会」ということで、夕刻から近所の居酒屋で忘年会を行い、その流れのまま放送に入るそうです。「そうです」とは他人事のようですが、そうでも思わないと…。更に忘年会には「ブックスひろしま」から代表の財津正人さん、そして「ブックスひろしま」の“非公式”USTREAM配信「ぶっくちゅひろしま」のノヴィンさんも参加。もちろん、そのまま放送に加わるはず。ナンダロウさん不在の今回に続いて波乱に富んだ放送になると思います。

詳細は「しのばずくん便り」からもどうぞ。

・しのばずくん便り:20101220 今週のしのばずくん

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9
12月

Edward Gorey Auction

abebooksのブログ「Reading Copy Book Blog」にて、驚きのニュース。

20101208 Reading Copy Book Blog:Edward Gorey Auction

12月9日 11時(アメリカ東部時間)、Bloomsbury Auctionsにて、エドワード・ゴーリーの作品・所有品、あわせて60点がオークションに登場。

注目は、ゴーリーのトレードマークとしても知られる毛皮のコート。14点もの出品。

Fur Coat (via Bloomsbury Auctions)

本はもちろん、原画、またポストカードなどの印刷物も数多く。なかでも、ゴーリーの版権を管理していたことでも知られるニューヨークの書店Gotham Book Mart(ゴサム・ブックマート)関連の出品は、個人的に大好きな書店だけに刺さるものが。下記画像にある水色の栞は、ゴサム・ブックマートのために作られたものとのこと。

A Group of Ephemera (via Bloomsbury Auctions)

また、これまたゴーリーの作品に登場する中でも好きな言葉「SO MANY BOOKS; SO LITTLE TIME」のトートバッグ(サイン入り)も。

Signed tote bag (via Bloomsbury Auctions)

端から端まで全部くださいという気持ちなのですが、予想落札価格と懐具合を鑑みると実際に入札するには、なかなか厳しいものが(価格自体はとても破格だとは思っているのですが)。「Reading Copy Book Blog」の記事の締めくくりの一文に、首を痛めるほど縦に振りたい気持ちです。

If I find a bag of money today, I know where I’m going tomorrow.

23
11月

不忍ブックストリームの作りかた:本放送編

11/17(水)無事に「不忍ブックストリーム」本放送を終えることが出来ました。コンスタントに80人以上の方にご覧頂けていたようで、嬉しいかぎりです。

不忍ブックストリーム:第一回(20101117)

試験放送の経験を踏まえ、放送自体はそつなくこなせたのですが、その裏では途中まで録画し忘れるという失敗を犯しまして。せっかくの第一回放送にもかかわらず、録画されているのは後半のみです。ライブでご覧いただけなかった方には申し訳ありません。

さて、一段落つきましたので、予告通り使用機材とソフトのセッティングをまとめておきます。Mac OS X 10.6.5の下での使用となります。

1. ハード

接続図はこのようになります。

不忍ブックストリーム:ハード接続

使用機材は基本的に以下の4点。DCR-TRV17とC905mは映像のみで使用し、音は全てYetiにまかせています。

・MacBook Pro(15インチ)
・Sony Handycam DCR-TRV17(FireWire400 接続カメラ。メイン映像用)
・Logicool Portable Webcam C905m(USB接続カメラ。サブ映像用)
・Yeti(USBマイク)

使用して良かったと思うのはYeti。これは優れ物ですね。音声入力の指向性を変更できるので、敢えて無指向性にすることでギャラリーの声を拾うことも可能。またイヤフォン端子も備えているので、ナンダロウさんへの音声モニタもそこから取ることが出来て便利です(でなければ、MacBook Proからケーブルを延ばすことになるので)

2-1. ソフト:音声

映像は手順としては簡単(凝ろうと思えばいくらでも出来ますが)なので後回しにして、まずは音声。幾つかの必要な手順を踏む必要があります。

2-1-1. 「Soundflower」と「LadioCast」のインストール

「Soundflower」はオープンソースの仮想オーディオデバイス。「LadioCast」は元々は放送配信ソフトですが、ここでは音声ミキサーとして使用します。有無を言わずにインストール。

Soundflower
LadioCast

2-1-2. [システム環境]の設定

Soundflowerをインストールすると[システム環境設定]の[サウンド]にSoundflower(2ch)とSoundflower(16ch)が追加されます。普段のサウンド出力設定は主に[内蔵スピーカー]だと思いますが、これを[Soundflower(2ch)]にすると、鳴っていた音が一切しなくなり、仮想オーディオデバイスである「Soundflower(2ch)」に流れることになります。

不忍ブックストリーム:ソフト設定:システム環境設定(サウンド)

2-1-3. Skypeの音声設定

Skypeゲストの声を放送に乗せるため、またこちらの音をゲストにリアルタイムで届けるために、Skypeの[環境設定]→[音声/ビデオ]で音声の設定をします。

不忍ブックストリーム:ソフト設定:Skype

こちらの音声はYetiから。
[スピーカー]は先方の音声。Soundflower (2ch)に入れます。
最後に[呼び出し音]。これは直接USTREAMに流すためのSoundflower (16ch)に入れます。

2-1-4. LadioCastの設定

最後にLadioCast。ここで最終的に音声を出す先を設定します。

不忍ブックストリーム:ソフト設定:LadioCast

図の左側が音声入力、右側が出力です。
Yetiから入力された音声である[入力1:Yeti Stereo Microphone]と、先の[システム環境設定]で設定したMacの中の音[入力2:Soundflower (2ch)]を、それぞれの下部にあるボタンをクリックすることで、右の3ヶ所に流しています。

右側の流す先は以下の通り
・[出力メイン:内蔵出力] → MacBook Proのイヤフォン端子から流す音。私のモニタ用

・[出力 Aux 1:Yeti Stereo Microphone] → Yetiのイヤフォン端子へ。ナンダロウさんのモニタ用

・[出力 Aux 2:Soundflower (16ch)] → USTREAMで配信される音。USTREAM Producerへ

ちなみに出力のオン/オフは、先に記したように入力側のボタンで制御出来るので、例えば放送の前後に[入力1]、[入力2]の[出力 Aux2]をオフにすると、音声は出さずに映像だけを流すということも出来ます。

これで音声に関する設定は完了。他にも良い方法があるかもしれませんが(特にLadioCastにおいて)、上手くいっているのでひとまずはこれで。

2-2. ソフト:映像

さて、やっと映像です。使用しているソフトはBoinx Softwareの「BoinxTV」

不忍ブックストリーム:ソフト設定:BoinxTV

BoinxSoftware: BoinxTV

あるきっかけで1年以上前に入手していたのですが、何か放送をするような機会もなく、ずっとしまい込まれたまま。それが、このような形で陽の目を見ることとなりました。

中央で縦に並んでいるのがPhotoshopでいうところのレイヤー。映像素材を個々に用意しておいて、放送のタイミングに応じて表示・非表示を切り替えています。

不忍ブックストリーム:放送画面:通常時(左)/ テロップ挿入時(右)

例えば、放送画面左上の時計や下のしのばずくんロゴなどは常時表示。Skypeゲストの映像や情報テロップはその都度切り替えています。とはいえ、ショートカットキーも設定出来るので、意外に苦ではありません。但し、先の「試験放送覚書:映像編」にも記しましたが、モニタの解像度はあったらあっただけ便利なのは確かです。

基本的にはデフォルトで様々なレイヤーが用意されていますので、その組み合わせだけでも十分に使えるソフトです。しかし、触って初めて知ったのですが、更に嬉しいことにそれらのレイヤーは全て、Mac OS Xの開発ツールのひとつであるQuartz Composerで作られたもの。つまり、Quartz Composerの知識があれば、デフォルトレイヤーのカスタマイズ、また自分で一から新しいレイヤーを作成することも可能です(不忍でぱっと思いつくのは、本の見せ方ですかね)。個人的にQuartz Composerが好きということもあり、これは非常に嬉しいソフトの仕様でした。今後のいじりがいがあります。

参考までに、Quartz Composerで作ったムービーをひとつ。ブックストリームの放送前後に流そうと思い作成した、グルグル廻るしのばずくん。BoinxTVのレイヤーとしてではなく、独立したQuickTimeムービーとして書き出しました。

Shinobazu Book Stream 01 from objetmeme on Vimeo.


3. 配信:USTREAM Producer

BoinxTVは非常に良いソフトなのですが、これ単体ではUSTREAMに配信データを送れません。そこで、最後にここまで作った素材を実際にUSTREAMに流すための作業、「USTREAM Producer」でのセッティングを行います。

3-1. USTREAM Producerのインストール

Ustream Producerとは、USTREAMへのストリーミング配信を行うためのデスクトップ アプリケーション。ブラウザからも配信操作は行えますが、こちらのほうがより細かい設定が行えて便利。無料版と有料版($199)がありますが、有料版の機能はBoinxTVで賄えている部分がほとんどですので、不忍ブックストリームでは無料版を使用しています。

USTREAM Producer

3-2.映像( Screencast)の設定

不忍ブックストリームにおけるUSTREAM Producerの位置づけは、配信する映像と音の指定を行うためだけのもの。映像については、2つあるカメラの切り替えを含む全ての効果はBoinxTVで一括管理していますし、音声はSoundflower (16ch)で決め撃ち。故にUSTREAM Producerでの具体的な操作は、映像・音声それぞれにただひとつの入力ソースを指定するだけ。

不忍ブックストリーム:ソフト設定:USTREAM Producer

映像は[Screencast]機能を用います。これはモニタに映るウィンドウを指定して配信するためのもので、内部ソフトとして立ち上がる「Desktop Presenter」で設定。各種効果を合成したBoinxTVのプレビューウィンドウを指定します。

不忍ブックストリーム:ソフト設定:Desktop Presenter

3-3. 音声の設定

音声は以下の設定で。これでLadioCastで指定したSoundflower (16ch)の音声が、配信用として認識されます。

・[Add:]→[Live Input]→[Soundflower (16ch)]

・[Change:]→[Sound]→[Live Input Microphone]

3-4. 配信開始

あとはウィンドウ右下の[Broadcast]をクリックすれば配信開始ですが、その前にもうひとつ。右上の[Settings]で配信する映像と音声のクオリティを設定しましょう。不忍ブックストリームでは「High SD Quality 4:3」を選択。さすがに解像度は640×480欲しいので、そこは必須。後はその中で最小負荷になるようにと、ここに落ち着きました。

これで、やっと[Broadcast]ボタンを押すことが出来ます。しかし、そこで安心することなく、もう一仕事。[Record]を押すことを忘れずに。

以上、これだけの過程を経ての不忍ブックストリーム配信です。一度、設定を掴んでしまえば楽ですが、そこまでが結構大変ですね。特に音声は色々と試行錯誤が必要だと思います。

個人的な今後の目標は、BoinxTVの更なる活用。以前から好きでいじっていたQuartz Composerが、まさか不忍で役立つかもしれないことになろうとは。今は単純な映像表現が主ですが、カスタムレイヤーを放送に入れ込んでいければ良いですね。

16
11月

不忍ブックストリームの作りかた:試験放送覚書:映像編

不忍ブックストリーム:試験放送」の反省記。続いては映像編。画像があれば良いのは分かっていながら文章だけで(本放送終了後に詳しく)。

音声編同様、まずは使用ハード・ソフト一覧を。

使用ハード
・MacBook Pro(15インチ)
・Sony Handycam DCR-TRV17(FireWire400 接続カメラ)
・Logicool Portable Webcam C905m(USB接続カメラ)
・FireWire400-800変換コネクタ

使用ソフト
・BoinxTV
・USTREAM Producer(無料版)

カメラは2台体制。ナンダロウさんを捉えるメインカメラにDCR-TRV17(10年も前の機種ですが、こんなところで復活)、本の紹介用で手元を捉える C905m。これらをMacBook Proに繋げます。手元にあったFireWireケーブルが4pin(DCR-TRV17側)-6pin(FireWire400)のものしかなかったので、9pin(FireWire800)のポートしか無いMacBook Proとの接続のために変換コネクタを用意しました。しかし後になってこの選択が、ちょっとした不満をもたらすことになりました(後述します)。

2台のカメラから得た映像は、BoinxTVというソフトで管理・加工し、それをUSTREAM Producer(無料版)のScreencast機能を使って配信しています(USTREAM Producer側では映像切替えは使っていません。全部BoinxTV側で行っています)。ネットではCamTwist + USTREAM Producer(無料版)、またはUSTREAM Producer Pro(有料版)の方法が目立ちますが、BoinxTVを既に所有していたこともあり、この方法を取りました。また、これも本放送後に書きたいのですが、個人的にBoinxTVの仕様が好ましい理由もあります。

さて、やっと反省点。最も想定外だったのはこちら。

・MacBook Proのモニタ解像度不足

USTREAM ProducerのScreencastは、モニタの指定された領域をそのままキャプチャします。つまり、配信用映像の上に他アプリのウィンドウが重なると、それがそのまま映ってしまいアウト。今回の配信に利用したのはBoinxTVのプレビューウインドウで、サイズは640*480。MacBook Pro(15インチ)の解像度は1440*900。これで約1/4が使えなくなりました。

更にSkypeの五っ葉さん映像も取り込む必要あり。こちらはBoinxTVのスクリーンキャプチャ機能を使いましたが、 USTREAM Producer同様、上にウィンドウを重ねることは出来ません。これで実際に使えるモニタ解像度は約半分にまで減ることに。

こうなるとアプリの取り回しが結構大変でして。特にBoinxTVのメインウィンドウの横サイズを最小にしても、ウィンドウ内全てを表示することが出来ず。仕方なく半分ほどを外に出し、ショートカットを多用して対応。何とかなりはしましたが、所々で映像切替に失敗したのも確か。

普段は、より解像度のあるiMac(27インチ)をメインマシンとしているので、こちらで配信すれば良いのではと機材接続も試してみました。しかし、ここで問題になったのが先述のFireWire変換コネクタ。MacBook Proでは認識したDCR-TRV17が、iMacでは見事にダメ。海外にそういった事例が見られたので解決策も探してみたのですが、結局断念。もしかしたら、4pin-9pin(FireWire800)のケーブル一本で直結したら上手くいくのかもしれませんが、そこまでの予算と時間を割く時間なく現在でも保留中です。

BoinxTVで加工する映像は、やりすぎないことを基本としつつも幾つか実験を。やっぱり不具合、出ました。

・画面右上に出していた時刻表示が、USTREAMロゴと丸かぶり
 録画映像でも配信時の雰囲気を掴みやすいようにと、画面には日付・時刻を表示しま
 した。ところが時刻表示位置が画面右上 だったため、USTREAMロゴと丸かぶり。
 自分でUSTREAM映像をちゃんと見た経験のなかったことがバレバレ。

・画面下に横スクロールで流していた情報
 流していたのは、不忍ブックストリートのブログ「しのばずくん便り」の記事をRSSで
 取得したもの。このために整形した情報ではなかったので、自分でも冗長さを感じ
 ました。また、実際に放送を見てくれていた方が「酔ってきた」というツイートもされ
 ました。確かにずっと流していましたからね…。要検討項目です。

音声編でもそうでしたが、問題点を出すのが試験放送の試験放送たる所以。これを受けて、いよいよ明日22時から本放送。基本的な雰囲気は試験放送と変わらないですが、より見やすく聴きやすいものになればと思います。

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15
11月

不忍ブックストリームの作りかた:試験放送覚書:音声編

不忍ブックストリーム:試験放送」の反省記。最初は色々あった音声編。

まずは音声周りに関する使用ハード・ソフト一覧を(具体的な配線やセッティングについては、本放送後に改めて詳解します)

使用ハード
・MacBook Pro
・Yeti(USBマイク。ナンダロウさん使用)

使用ソフト
・Soundflower(仮想オーディオデバイス)
・LadioCast(音声ミキサーとして使用)
・Skype
・USTREAM Producer(無料版)

USTREAM配信は、映像よりも音声のクオリティが大事。頭では分かっていても、実際にやってみるとやはり問題噴出。全てはハード・ソフト両面における機材習熟不足ですので、後々のためにもちょっと長めにまとめておきます。

事前セッティングの段階で解消出来なかった最大の問題がこれ。

 ・Skype用の音声入出力設定の不備

試験放送当日、Twitterでのやり取りをきっかけに急遽実現した、五っ葉文庫(@itutubabunko)さんのSkypeを通してのゲスト出演。しかし急だったこともあり、五っ葉さんの音声をMacBook Proでそのまま受けて配信まで持っていく設定を探れず(具体的にはSkypeとLadioCastでの音声入出力設定)。結局断念し、MacBook Proの外部スピーカーから出した音をナンダロウさんが使うYetiで拾うという、確実なんだけど訳分からない方法。五っ葉さんの声が小さかった原因はこれです。

この決定を受け、次に考えたのはナンダロウさんのための音声モニタ。結局、用意しないことに決めました。その理由は以下の2点から。

 ・配信用のMacBook Proからの音声分配
 ・USTREAMの配信ラグ

配信用音声は、もちろん私もモニタするものなので、それを2人で聴くにはMacBook Proの音声出力端子から出た音を2系統に分ける必要あり。今思えば、ナンダロウさんの位置と配信機材の位置はそれなりに近かったので、イヤフォン分岐ケーブル(こういうの)がひとつあれば事足りたのですが、そこまで気が回らず。更に、放送後になってYetiにもイヤフォン端子があったことを思い出しました(出力設定はLadioCastで)。全く、宝の持ち腐れもいいところ。

一方で、ナンダロウさん使用のノートPCからブラウザを通して流れる音声をイヤフォンで聴いてもらうことも出来ましたが、 USTREAMには数秒~数十秒の配信タイムラグがあります。自分の声が後から聴こえてくる状況下では、さすがに話すのは難しいでしょう。

今はSkypeの音声の取り回しも分かりましたので、本放送ではMacBook Proからそのままクリアにゲストの声を届けることが出来ると思います。またこうなると当然外部スピーカーからの音出しも無くなるので、Skypeゲストの音声を聴いてもらうためのモニタも準備(Yetiから分岐ケーブルを出せば、スタジオ側の複数ゲストにも対応)。

音声トラブルと言えばもうひとつ。配信開始から約4分間、音声が出ませんでした。これはUSTREAM Producerの設定ミス。配信する映像側で音声の出力先を指定して安心と思っていたのですが、それとは別に音声ソースを変更する必要がありました(具体的には、ウィンドウ内[Change:]の[Sound]を[Live Input Microphone]に設定)。

と、様々な問題がありましたが、裏返して試験放送という意味合いにおいては成功と言えるでしょう。いつもこうではいけないでしょうし、またその程度にも境界線はあるでしょうが、それでも失敗が許容されるメディアを誰もが手に入れられることに喜びを感じたいです。

また今回最大の収穫はSkypeゲストの可能性。一番最初に五っ葉さんに出てもらえたのは非常に大きかったです。ナンダロウさんとのあのやり取りを世界中(大袈裟)で同時に共有出来る楽しさといったら(笑)。今後、本当に世界中からゲストを呼べたら更に楽しいことでしょう(個人的には台湾の胡蝶書房さんに是非とも)。五っ葉さん、ありがとうございます。

15
11月

不忍ブックストリームの作りかた

タイトルはもちろん、『一箱古本市の歩きかた』のパクリです(笑)。

不忍ブックストリートがおくるUSTREAM放送、その名も「不忍ブックストリーム」が始動しました。

きっかけは先月某日、ウチで開いた「谷根千おしょくじ」の食事会。
その席にナンダロウさんが遊びに来てくれまして、何かの拍子にUSTREAMやりたいんだよという言葉を聞き、あぁいいですねぇ興味あるんですよ、機材もそれなりに揃ってますよ。そうなの、じゃぁ場所もここでいいんじゃない?と、気がつけばあれよあれよという間に(だったような)。

番組内容はナンダロウさんをメインパーソナリティとして、毎回ゲストをお呼びするトーク形式。不忍ブックストリートに関わる人はもちろん、谷根千界隈で様々な活動をされている人まで、幅広い話を聴けることになると思います。

私の役目は放送技術全般。事前の機材セッティングから、放送中の映像・音声管理まで、番組を放送するためのバックグラウンドを担います(たまに、声だけの参加があるかもしれません)。

今週水曜の本放送第一回に先駆けて、先週水曜に試験放送を行ないました。

不忍ブックストリーム:試験放送

*注意
冒頭から約4分間、音声が出ません。こちらの配信ミスですので、音が出ないからとボリュームを上げないでください(音が出始めた瞬間、大音量になってしまいますので)。

仕事柄、映像制作には慣れているつもりですが、放送は素人。ネットに記された先達の知恵を参考に臨んでみたものの、当然のごとく、見るとやるとじゃ大違い。特に不慣れな音声周りでは、色々と不具合がありました(それを知るための試験放送ですので、結果的には成功とも言えるのですが)。

本放送を前に、機材セッティングや放送中のノウハウなど、試験放送で気がついたことを備忘録を兼ねて記しておきたいと思います。

8
10月

秋も一箱古本市2010(一箱古本市の箱)

明日、10/9に迫った「秋も一箱古本市2010」
遅ればせながらの告知です。

春の一箱古本市でデビューした「一箱古本市の箱」が、今回も登場。コシヅカハムにて「Jungle Books」と「つぐみ文庫」、ライオンズガーデン谷中三崎坂にて「一斤堂」の計3店が使用してくれます。会場と各店の紹介文を不忍ブックストリート公式サイトの店主一覧から転載します。

●コシヅカハム(文京区千駄木3-43-11)

Jungle Books
3回目の参加になります。毎回テーマを決めて箱作りをしていますが、今回は趣向を変えて『ジャケ買い』です。レコードやCDの『ジャケ買い』のように私は本を『ジャケ買い』します。美しい装丁や変わってたり興味持ったものを読んでも読まなくても買い続けた記録を大放出。ジャンルもバラバラです。その中で欲しい本を発見する方や同じようにジャケ買いの喜びに震える方と出会いたいです。

つぐみ文庫
今回初めて一箱古本市に参加するつぐみ文庫です。現在古書ほうろうさんにて、「一箱古本市の箱」のデモンストレーション出店をしています。(10月31日までの予定) 今回こちらを移動しての参加となります。雑貨・散歩などの本、絵本を中心に出品します。どうぞよろしくお願いいたします。

●ライオンズガーデン谷中三崎坂(台東区谷中4丁目)

・一斤堂
初出店です。料理・エッセイを中心に出品の予定。雑貨も少しあるかな?屋号の一斤堂は一斤染めから。「いっこんどう」とお読みください。

Jungle Booksさんと一斤堂さんは、初めて使ってくれます。Jungle Booksさんはブログ「密林生活」に準備中の様子も。箱いっぱいに本が収まっています。

・密林生活:一箱準備中

つぐみ文庫さんは現在、古書ほうろうさん店内にて一箱古本市の箱を用いて出店中。一箱古本市当日のみ、コシヅカハム前に移動しての出店となります。ちなみに、ほうろうさんの店内には、もうひとつBUKUBUKU CAFEさんの一箱古本市の箱があります。ほうろうさんは「秋も一箱古本市2010」の会場にもなっていますので、店内にも足を運んで是非ご覧ください。詳しくは下記、ほうろうさんのブログをどうぞ。

・古書ほうろうの日々録:一箱古本市の箱、店主さん決定!

これで一箱古本市の箱の使用回数は、延べで10回を超えることになります。今回もそれぞれに使い方や装飾に趣向が凝らされた箱を見るのが楽しみです。

しかし、気になるのは当日のお天気。未だはっきりしません。9日の朝7時に、当日の開催、または10日への順延が決定され、青秋部ブログ「東奔西走の記」、並びに不忍ブックストリート公式サイトにて発表されます。ご確認の上、足をお運びください。

青秋部 東奔西走の記
不忍ブックストリート公式サイト