瓢箪から駒が出て山上ヶ岳登山。
修験道の山,恐ろしい行場のある山,女人禁制の山…。情報としては知っていたものの,まさか自分が登ることになるとは思わなんだ。山道自体は整備されているのでつらさはほとんど感じず,「お亀石」(「石の上にも三年」の石),「鐘掛岩」までをクリア。
しかし噂に名高い「西の覗」はさすがに…。両肩からかけた命綱だけを頼りに高さ200mを超える断崖絶壁に頭から身を乗り出す行。何が恐ろしいって,その命綱を任せるここに常駐する真樹日佐夫に似た男の色気漂う介錯人。どうすれば行者の肝を縮み上がらせることができるかは心得ているわけで,これがいい塩梅に綱を緩めてくれるのよ。その度にビビって岩にしがみつくと「放せ。両手はあわせとくんだ。」と檄が飛ぶ。この怖さ,やっぱり自らが体験してナンボですわ。
細野さんとBrian EnoをiPodに詰め込んで西へ。目指すは吉野の山奥。
夜行の高速バスで近鉄奈良。そこから大和西大寺・橿原神宮・下市口と電車を乗り継ぎ,最後は路線バスに乗ってようやく到着。しかし遠い,遠いよ。誰か,大阪あたりからヘリの路線を作って(実際,サブちゃんがここを訪れた際はヘリに乗ってやってきたらしい。さすが…)。
5年か6年ぶりに訪れたこの地,世界遺産に登録されたからか当時と比べるとどことなく開けた印象。観光客はやたらいるし(自分もそうだってな),携帯も繋がるし,当時強く感じた秘境感は薄まったような。でも,だからなんだってこともないんでとにかくゆっくりする。大辨財天さんを参詣して,温泉入って,細野さんのサイン色紙を眺めて,酒飲んで飯食って…。あとは爆睡。
そろそろ旅欠乏症。暇になると航空会社のサイトでタイムテーブルと料金を眺めてみたり。
そこでルフトハンザが成田-ミュンヘン路線にて高速インターネットサービス「FlyNet」を開始したことを知る。Wi-Fi対応の無線LANカードを内蔵したコンピュータであればオッケーらしく,これであの怠惰で窮屈なブロイラーの時間が少しは楽しくなるかもしれない。
でもこれ,有料なのよね。定額制と従量制があって,定額制だと1フライト$29.95。約10時間のフライトのうち半分の5時間使うとして$6/h。2chを見るためとしてはちょっとお高いなぁ。それと,機内設備から電源を取ることは可能なんだろうか。金を払って繋がったはいいけど途中でバッテリ切れ,コンピュータがただの金属塊に成り果てた時には悲しすぎる。
と,色々言ってるけど,肝心の渡航予定自体がないので現時点ではチェックのみ。今度ニュルンベルクに行く時はフランクフルトではなくミュンヘンに着陸。そこからDBで北上するっていうルートもありかなと夢想だけは膨らむところ(でも実はSASも好き)。
追記
もうひとつの路線,サンフランシスコ-ミュンヘンでAppleの中の人が試した模様(apple.com)。しかしカメラ接続してiChat AVかよ。電車内と同じように,隣の席でずっと喋られちゃたまらんな。
帰国日。
しかし最後に大失敗。最後の最後,楽しみに取っておいた『Freddy vs. Jason』を寝坊で見事に見逃し…。深夜に行こうと思っていたらいつの間にか昏睡。起きたら朝の6時で,今から映画館に走ったら(毎日オールナイト上映してた)確実にフライトに間に合わない。やっぱり美味しいものは最初に食べなきゃダメなのよ…(いや,両者共に食ったら相当まずそうだけど)。
正直言って,それぞれ1作目くらいしか記憶にないんだけど,街中至る所に貼られたポスターのキャッチコピーにとにかく痺れまくったのです。なんつったって「Winner Kills All!」ですから。
辛抱堪らず,再びGotham Book Martの扉を開いて諸々購入。
まずは『Sherlock Holmes Crossword Puzzle』。各短編の一部と,その謎を解くキーワードが隠されたクロスワードが一組となって,全数十編。クロスワードがホームズネタに限らない(新聞に載ってるいわゆる普通のクロスワードと同じ)のが残念だけど,まぁこの組み合わせが珍しかったので。
続いてゴーリーグッズとしてマグカップ。女の子が本を積んだトレーラーを引っ張っている絵柄で,その横には「So Many Books… So Little Time.」の一文(全くもって…)。
他にも色々あるけれど実際に読めるかというと難しいし(語学力・読解力共に),また手持ちも少ないんで止めとこうかと思ったら,最後にChris Wareの絵本(と言っていいのかどうかすら謎)とご対面。
後期クシー君を思わせるとっつきの良い絵柄に騙されてはいけません。某帝国の黒鼠とは対極を成す『The Quimby Mouse』,ノスタルジックな未来で孤独に過ごすオッサンを描いた『Tales of Tomorrow』,ヲタでゲイでマザコンのこれまたオッサンを描いた『Rusty Brown』等々,その内容は軽やかに,それでいて深く病んだ気狂い系。しかもその本としての体裁は見事にオブジェ。ペーパークラフト(もちろん,それらを実際に組み立てようとすると裏のマンガがズタズタに切り裂かれてしまうので,作るに作れない)があったかと思えば,余白を埋めるために縦横無尽に細かい文字が書き込まれ,またその文章がいちいちひねくれている。ゴーリーとあわせて,この店のテイストがちょっとわかったような(更にわからなくなったような)。
喜んでそれらを小脇に抱えてレジに向かおうとすると,更にトラップ。本屋のスタッフ(おそらく店長)が「おっ,Chris Wareだね。こいつ,いいよねぇ。ちょっと待て,他にもあるから持ってくるよ」と,またドサッと…。そんなに買えねぇよと,2冊に絞って勘弁してもらう。まったくもって怖ろしい本屋だよ…。
後日,ネットで調べたら,Chris Wareの個展が日本でも2000年に開かれていたらしい。
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丸一日,費やせるのも今日が最後。
と思ったら,妙に眠れず,朝も4時から地下のビジネスセンターでネット(Bryant Parkは7時まで施錠されているので入れず)。すると今夜,Iggy PopとDuran Duranのライブがそれぞれマンハッタンのクラブで行われることをTicketmaster(日本の「ぴあ」みたいなもん?。今回のbjörkライブのチケットはここで入手)で発見。見たいのはやっぱりIggy,でも客層が気になるのはDuran Duranだなぁ,などと思いながらチケットの確認をすると両者共にソールドアウトの様子…。でも日本でTicketmasterを見ていた時はそんなスケジュール無かったじゃねぇかよと思いよく見ると,チケット発売日は共に8/22。こっちに着いた翌日…。ちくしょー,ホテルの部屋からネットが出来ていたら,もしかしたらもっと早く知ることが出来てチケットも…。などと夢想しても後の祭り。
気を取り直して朝飯後,地下鉄に20分揺られQueensへ。目的地はスーパーマーケットTarget。ここ限定のあれやこれやを,前述ライブの腹いせもあって諸々購入。
帰り,Roosevelt Islandで途中下車。こことマンハッタンを結ぶケーブルカーを眺めながら,『スパイダーマン』でデフォーが頑張ったのはここねと一人ご満悦。
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旅も終盤,そろそろニューヨーク観光の定番巡り。
ということで朝イチ,まずは上がってメトロポリタンとグッゲンハイムへ。
メトロポリタンは相変わらず(っつったって2度目のくせに)広大な空間に圧倒されっぱなし。それでも今回は散漫にならないようにと,最初から見るものを絞って挑戦。フェルメール,武器・甲冑,中国・日本美術…。が,これでもたっぷり2時間半から3時間。しかし何が嬉しいって,普通に(つまり無料で)写真撮影・スケッチが許されていること。自分の経験では,ヨーロッパでも無料,もしくは追加料金を払えば可能なところが多いと思うんだけど,一方でなぜに日本はほとんどが禁止しているのか?。
続いてグッゲンハイム。でも正直,せつなくなってばかり。展示品よりも建築に価値があることは今や誰も疑うところではないのに,その建築の手入れがあまりにも…。窓の曇りに始まり,剥離が目立つ外壁,丸見えのバックヤード…。メトロポリタンよりも高い入館料取ってんだからなんとかしろよ。クレマスター撮影時,Matthew Barney(björk姐さんの旦那)にもっとグチャグチャにしてもらって欲しかったくらい…。
ひとまず休んで夕方,今度は下がってグラウンドゼロへ。今となっては何てことのない工事現場。でもここにリベスキンドの案が建つわけねと想像するとまた楽し。とは言いつつ,本当はシド・ミードの斜線都市だったらなぁと思っているんだけど…。
夜,諸々の用事を済ませて宿近辺まで帰ってきたらBryant Parkへ。
でも今回はネットに非ず。ここで6末~8月の毎週月曜日,無料の映画上映会が行われているそうで,今日が最終日。そしてその最後を飾るお題目は『2001年宇宙の旅』。
映画の内容自体よりも,観客の動向を観察しているほうがいちいちおもしろかったですよ。オープニングをスタンディングで迎え,タイトルが出た瞬間には拍手と共に大歓声が起き,『美しき青きドナウ』が流れるとリズムにあわせて手拍子。
しかし何よりも興味深かったのは,モノリスに触れた猿人が初めて骨を振りかざし,そして戦い済んでそれを宙に放り投げる両シーンでのやんやの大拍手。お前ら,知恵を得たというよりは武器を手にしたという意味で喜んでんだろうと思ってしまう私はひねくれているでしょうか。
でも,パンナムの宇宙船登場シーンで「PAN AM, PAN AM」と小声で囁く現地人とおぼしき人を発見した時は親近感。
そろそろ疲れが溜まりだして,朝飯→公園ネットの後に再び寝る。
昼を過ぎてからVラインに乗ってクィーンズにあるP.S.1 Contemporary Art Centerへ。”P.S.1″とは”Public School No.1″の略で,元々は学校だった建築を美術館にリノベーション(この言葉のむず痒さはなんとかならないものか)したものだそう。
幾つかの企画展と常設展があったなか,一番気になったタレルの作品はその性質上(光を嫌う),夏場日中の展示は無し…。ガックリしながら,それでもせっかく来たんだから全部見て廻らなきゃなと,迷路のような(元々が古い小学校だからその空間の雰囲気もあまり良くない。あんなとこ,生徒で入りたくないよ)内部をグルグル巡る。
やっと最後の部屋だという安堵感を伴いながらTaryn Simonの写真展示へ。しかしここでやられました。隅から隅までカッチリとフォーカスのあった写真に写っているのは冤罪で投獄された人々。しかも彼らが身を置くその舞台は,逮捕された場所やシチュエーション,または彼らの人生に縁のあるところ。なかでもマットレスの下に隠れていたところを発見・逮捕された人の写真が最高にカッコイイ。また,どことなくリンチの画とシンクロする雰囲気も。
が,一方でこの作品趣旨を知っているにもかかわらず,数人の被写体に対して「こいつ,ほんとに悪そうだなぁ」と,単純に外見だけから思っている自分を否定することができませんでした。
これらの写真,The Innocence Projectの一環だそうで,写真集も出ています(ミュージアムショップで$37で売っていたものの,amazonにあるだろうと思って止めといたら,案の定,安価で売られています)。
ちょっとした時間潰しに,ロックフェラーセンターのすぐ近くにある紀伊國屋書店で色々と立ち読みしていたら,『Invitaion』に先日見たゴーリーの展覧会を催していたGotham Book Martの話が載っていた。
記事によると,展覧会どころか筋金入りのゴーリー縁の店で,版権も幾つか管理。レジ周辺にTシャツやらマグカップ,ポストカードなどのゴーリーグッズがやたら充実していたのもその流れか。この店を知らずして日本に戻り,そしてその存在を知っていたら悔やんでも悔やみきれないところでした。出会えた偶然に感謝。
タイトルの”Wise Men Fish Here”は,店先にぶら下がっている看板に書かれている一文。「賢き人はここで本を得る」とでも訳しましょうか。
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