Archive for 3月, 2015

18
3月

博物の金沢:工芸という生物

   Posted by: fumi    in Art

では、金沢で出逢った博物的と呼びたくなる美術品を。

最初は、陶芸家の薄井歩さん。

2013年3月に金沢を訪れた際に、石川県立伝統産業工芸館で開かれていた個展「パライソ 極楽の浜」のチラシを目にして一目惚れ。すぐさま会場に向かいました。

自然界、特に貝や珊瑚、甲殻類などの海洋生物を想起させる形と、その表面を細密且つ高密度で覆う紋様。それは生命を持っているようでもあり、また今しがた化石として掘り出されたものにも見えました。

この時は会期終盤に訪れたため、欲しいと思った作品には軒並み赤いシールが。その後、同年9月に京橋・LIXILギャラリーにて開かれた個展「陶 パライソ」で新たな作品を拝見。ようやく我が家に迎え入れることが叶いました。

薄井歩

薄井歩

 

 

続いては、金工の河野迪夫さん。

魚類・鳥類・昆虫、古生物まで様々な生物の形態から生み出された作品は、有機的な美しさと同時に、銅と緑青の質感も伴った無機質な機械的魅力をも感じます。そのまま生物として自然界に存在するように感じられたのが薄井さんの作品であるのに対して、河野さんの作品には、現代人なのか古代人なのか、はたまた宇宙人なのか、誰か知的生命体によって作られたハイブリッドな生物に見えます。

 

河野迪夫

河野迪夫

 

河野迪夫

河野迪夫

 

標本や剥製のような王道としての博物品を愛でる愉悦とは別の喜びを覚える、現代の博物的なる美術品。次に金沢を訪れる時、また新しい出逢いのあることを。

 

17
3月

博物の金沢:はじまり

   Posted by: fumi    in Art

3/14に開通なった北陸新幹線。そのなかでもメディアでの扱いが多いのは、やはり金沢。個人的にも、ここ5年ほど年に一度は訪れている町です。

最初は単なる観光旅行。茶屋街に21世紀美術館、日本海の幸と、通り一遍の町巡り。しかし何処の町でもそうですが、足を運ぶとなれば当初の目的だけではなく、他にも色々と眼にしたいもの。そうやって探しているうちに出会ったのが、博物的と呼びたくなる美術品の数々。ニワトリが先か卵が先かのごとく、金沢という土地柄が先か私の趣味嗜好が先か、そのどちらが先かはわかりませんが、気がつけば心惹かれる作品に出会う町となっています。

その最初のきっかけとなったのは、彫刻家の橋本雅也さん。
2011年3月に大阪・主水書房で開かれた初個展「殻のない種」で魅了され、その後、作品の発表や展覧会の情報を追うようになりました。
すると、2012年4月に金沢市のお寺、廣誓寺で展覧会が開かれることを知り、それを見るために金沢へ。その後も2013年8月、金沢21世紀美術館での 「第2回金沢・世界工芸トリエンナーレ」に参加、そして昨年2014年5月~8月には、同美術館で展覧会「間なるもの」を開催。その都度、作品を拝見するために毎年金沢へと足を運ぶこととなりました。

金沢21世紀美術館「橋本雅也 間なるもの」

以前は水牛の角で作品を作られていましたが、「殻のない種」からの橋本さんの作品の主な素材は、鹿の角と骨。猟師に同行して出会った一頭の鹿、その骨から生み出された花々。その裏表の死と美から目を離すことが出来ず、ただ息をのみ対峙するばかりです。

作品の画像は先の「間なるもの」のサイト(ここにある水仙が最初の出逢いでした)などにありますが、ここでは昨年末、London Gallery 白金で開かれた個展「一草一木」を拝見した時に撮影したものを。

橋本雅也「一草一木」

橋本雅也「一草一木」

 

橋本雅也「一草一木」

橋本雅也「一草一木」

 

話が長くなってしまいました。橋本雅也さんの作品に逢うために訪れた金沢で、新たに出会った博物的なる美術品の紹介は次回に。