Archive for 9月, 2012

きっかけは、2つのオブジェ。

Milano - Castello sforzesco - Diavolo-automa di Settala - Foto Giovanni Dall'Orto - 6-1-2007 - 02

"The Chained Slave" - this image from Wikimedia Commons

Ivory Carving - this image from "Cabinets of Curiosities"

先週、国書刊行会40周年を記念して作られた小冊子『私が選ぶ国書刊行会の3冊』を入手。

国書刊行会40周年記念特設サイト

国書刊行会40周年記念小冊子 私が選ぶ国書刊行会の3冊:表紙

作家・学者等、各界著名人61名が、それぞれに愛する国書刊行会の出版物3冊を選び語る小冊子。しかし、表紙を開き本文へと進むその行く手を阻まれ、目が離せなくなってしまったのが、ヴンダーカンマーを想起させる装丁。国書刊行会40周年にふさわしい驚異の棚。

そこで見覚えのあったのが、先に挙げた2つのオブジェ。イタリア・悪魔のオートマタ「The Chained Slave」と、ドイツ・Dresden Collectionの象牙の塔。これらを目にしたのは、 ヴンダーカンマーを扱った書籍の代表的な一冊。Patrick Mauriès『Cabinets of Curiosities』

Patrick Mauriès『Cabinets of Curiosities』

本棚から本書を取り出し確認すると果たして、記憶の通り、2つの図像が見つかりました。こうなると、他のオブジェの出処も調べたくなるのは、博物好きとして必然の流れ。国書刊行会からの愉しい贈り物であり、また厳しい試験でもあるという気持ちで事に臨みます。

国書刊行会40周年記念小冊子 私が選ぶ国書刊行会の3冊:ナンバリング

まずは下準備として、表紙・裏表紙・背表紙をスキャンし、各棚毎にナンバリング。ひとつの棚に複数のオブジェが収まっているところもあります。
ここから実作業。手始めとして当たりをつけたのは、同じ『Cabinets of Curiosities』からの引用の可能性。1ページずつ捲っては小冊子と見比べていったところ、先の2点とあわせて8点。調べる過程で気がついたのですが、その中のひとつである鰐の標本(棚番号16)は、ドイツ・ハレのヴンダーカンマー。2006年12月に現地を訪れた際に撮影した写真を引っ張りだすと、しっかり写っていました(つまり、自分では忘れていたということでもあり…)

20061215 Halle, Germany

『Cabinets of Curiosities』を一冊通して見終わり、さて、次はどうしようかと思いながら小冊子を眺めると、見覚えのある書影(棚番号26)。他のオブジェとの縮尺のバランスの違いで油断したが、これは間違いなくヴォイニッチ手稿。更にもうひとつ。額装された髑髏の絵(棚番号11)は、明らかに歌川国芳「相馬の古内裏」 これら2点が加わり、10点判明。

続いて、この装丁を手がけた人にヒントはないかと、小冊子の奥付を眺めます。その人は山田英春氏。『巨石―イギリス・アイルランドの古代を歩く』の著者として存じ上げていましたが、調べるとバーバラ・M・スタフォード・著 / 高山宏・訳『ボディ・クリティシズム』の装丁も。期せずしての高山さん繋がり。
ブログを拝見すると、目に飛び込んだトップの画像が、まさにこの驚異の棚に収められている壜(棚番号8。但し、これらの壜が何処のものかまでは探すことは出来ず) また、鉱石の断面や、人形の頭部などもブログの画像から見つけることが出来ました。これで13点。

しかし、ここで手詰まり。手持ちのヴンダーカンマー関連書籍を数冊捲ってみましたが、類似するものは見つけられず。こうなると、googleに頼るしかありません。スキャンした表紙・背表紙・裏表紙から、オブジェをひとつひとつ切り出しては、googleのイメージ検索に放り込み。

そうして見つかったのが21点。これまでに見つけていたものと合算すると33点。数え方にもよりますが、装丁の中に陳列されているオブジェの数は約60点。100点満点換算にすると、試験の結果は55点。ギリギリ及第点に達せずの落第。ヴンダカーカンマー定番の鰐の剥製(棚番号2)や、七福神と思しき宝船(棚番号29) 流し目の赤い面(棚番号11)などは判るかなと思っていたのですが… さすがに国書刊行会の壁は高く厚かったです。

とはいえ、この遊びの中で初めて知ったことも多く。オブジェ自体の名称・出自はもちろん、その作者や収蔵されている施設やショップは、今後の好奇心を更に広げるものとなりました。

最後に知り得たオブジェの出処の対応をまとめておきます(数字は棚番号)。もちろん間違いが無いとは言えませんので、発見されましたらお知らせいただきたく。速やかに訂正します。また知りえなかったオブジェについても、インターネットの集合知に頼りたいところ。ご存知の方がいたらお教えくださいませ。

1. 胸像 – Manfreddo Settala “The Chained Slave”
3. ノコギリザメ – Blog: Ragland Hill Social
5. 子供の頭部と歯車:頭部 – 山田さんのブログより、メキシコの画像
5. 子供の頭部と歯車:歯車 – 橋本時計店
6. 水晶:白 – Wikimedia Commons
7. アンモナイト – Wikimedia Commons
8. 薬瓶 – 山田さんのブログのトップ画像
9. 青い鎖のブローチ – Georg Laue
9. 婦人写真 – Sun Frame with Woman
Loud Flowerというバンドのアルバム『Happy Now』のジャケ写にも使われています – Loud Flower『Happy Now』
11. 額装された髑髏の絵 – 歌川国芳「相馬の古内裏」
11. 赤い箱 – Halle Collociton Cabinets of Curiosities 27
11. 馬の頭骨 – Bone Clones
12. 歯車オブジェ – 都筑道夫『幽霊通信』 装丁:山田英春
13. 骸骨 – Paul Reichel “Tödlein-Schrein” 1580 『Cabinets of Curiosities』では1555年と記されている
15. 家族の肖像写真 – The Denver Post
16. 鰐のホルマリン漬 – Halle Colleciton
16. 茸の博物画 – Common Mushrooms of the United States
17. 男性の立像 – Ercole Lelli Flayed Man
20. 見開きの本 – The Book of Accidents
20. 紐綴じ本 – William Hoiles Picture of old books. Basking Ridge Historical Society
21. 眼球望遠鏡 – Corning Museum of Glass: Optical Model of the Eye
22. ガラスケースに入った髑髏 – Nautilus
25. 鉱石断面:大 – 山田英春『たくさんのふしぎ 石の卵』
25. 鉱石断面:小 – 山田さんのサイト「亀甲石」
26. 赤玉枠のレリーフ – Johann Georg Haintz “Cabinet of Curiosities” 1666
26. ヴォイニッチ手稿 – Wkimedia Commons
27. 石版渦 – Lucca Labyrinth
30. タロット – Charles VI (or Gringonneur) Deck; Le tarot dit de Charles VI
31. 象牙の塔 – Dresden Colloction
33. 赤玉の飾り – Johann Georg Haintz “Cabinet of Curiosities” 1666
34. 珊瑚 – Ferdinand II’s cabinet at Schloss Ambras, Innsbruck, Austria
36. 箱 – Michel Mann Box (Nuremberg, around 1600)
41. 裸体 – Nautilus

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13
9月

Visite virtuelle de Deyrolle

   Posted by: fumi    in Wunderkammer

久しぶりにブログを書くことになったきっかけは、やはり、パリのDeyrolle(デロール)

ネットではありがちな偶然の連鎖で、久しぶりに訪れたデロールのサイト(かつてはRSSを登録していたのですが、記事の重複配信が多かったために停止していました) 本来の目的を果たすためにリンク先を探していたところ、眼の端に記事のキャプションとして記された「Visite virtuelle de Deyrolle」の一文が引っかかりました。

これはもしや? と、英訳すると「Virtual tour of Deyrolle」 あぁ、やっぱり… こうなると胸は更に高鳴ります。アレよ来い!! と、クリックしたその先には、待ち望んでいた光景が広がっていました。

Deyrolle: Visite virtuelle de Deyrolle


大きな地図で見る

Googleがストリートビューの技術を使って作った、お店の中を実際に歩くかのように体験出来るサービス「Google Business Photo(日本サービス名:おみせフォト)」に、デロールが対応していたのです。

ページを開いて最初に立つ場所は2階。螺旋階段を上がったところ。その先には真っ直ぐ並ぶ4部屋と、2室目の横にある細長い部屋の計5部屋。実際に訪れた時と同様に行きつ戻りつ、サイトを訪れた本来の目的を忘れて堪能したことは言うまでもありません。ストリートビュー同様に拡大表示も出来ますから、標本の並ぶ棚や書影をじっくり眺めることも。このラックに収められていたポスターを見た、この抽斗を開けた、この棚に入っていた骨格標本を買ったと、記憶の扉が次から次に開いていきます。そういえば、火事で焼けた店内と剥製を撮影した写真集『1000 Degrees Celsius Deyrolle』が置かれた場所も変わっていませんでした。

最初は2階ですが、螺旋階段を下りて1階へ行くことも出来ます。デロールというと剥製が並ぶ2階が有名ですが、園芸を中心とした1階も楽しいですよ。また、そのまま店外へ出て、店舗外観を眺めることも。実際に入店するかのように、再びお店の中へ入って螺旋階段を上がるのも楽し。

そして、こうなると夢想してしまうのは、世界中の博物系ショップ・ギャラリーが、このGoogle Business Photoを採用してくれないかなと。想い出に耽るなら、同じくパリの「Claude Nature」 や、ニューヨークの「The Evolution Store」「Morbid Anatomy Library」 未訪のショップに想いを馳せるなら、メルボルンの「Wunderkammer」やトリノの「Nautilus」 いつか、そのような日が来ることを。

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