Archive for the ‘Book&Magazine’ Category

5
5月

I’ll See All – 04

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高山宏さんの講演会「アーサー・ミーと知の愉しみ」を前にしての脳内整理も、そろそろおしまい。最後の話題は他の人物や作品に見られるアーサー・ミーの影響について。今回は海外編。

ひとつめは、先の記事でも触れた、アンドルー・クルミーの『ミスター・ミー』
高山さんが東大の『UP』2009年1月号で「こんなミーイズムなら大歓迎だ」というタイトルで、この「ミスター・ミー」はあの「アーサー・ミー」だと述べた一冊。

東京創元社:アンドレ・クルミー『ミスター・ミー』

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アンドレ・クルミー『ミスター・ミー』

ふたつめは、イギリスの画家、Paul Rumsey (ポール・ラムゼイ) 画家・イラストレーターなど、世界中のアーティストを紹介されているブログ「traveling with the ghost」にて、その存在を知りました(ちなみに、リアルタイムで知った時のブログは「旧館」ではなく本館でした)

20090626: traveling with the ghost (旧館 Old) : Paul Rumsey

サイトから紹介文を引用させてもらいます。

Paul Rumsey (ポール・ラムゼイ)
1956年エセックス(Essex)生まれの画家。

小学生の頃は学校に馴染めない劣等生で反抗的な態度をとっていたらしい。
自分の寝室には、アーサー・ミーが編集した『イギリス児童大百科』の1930年代からのものが10巻あり、その中の神話や妖精譚や歴史や動物や絵画や彫刻に関した7000を超えるイラストは、驚きに満ちた世界をラムゼイに垣間見せてくれ、幼い頃はこの本を見ることに多くの時間を費やしたのだそうだ。

こちらの記事の最後に参考として記されているように、この文章はPaul Rumsey本人のサイト、またイギリスにあるChappel Galleriesのウェブを翻訳されたものだと思います。

Paul Rumsey: Autobiogrpahy

Chappel Galleries: Paul Rumsey

作品は、『イギリス児童大百科』の神話や妖精譚に惹かれたという言葉を証明するかのように、現実とは一線を画した世界観で描かれています。

20130504_libraryhead

Paul Rumsey: Library Head (from “The Paul Rumsey Homepage”)

 

最後は高山さんの著書『殺す・集める・読む』でも語られているシャーロック・ホームズ。私個人としても小学生の頃に新潮文庫の延原訳を手にして以来のファンです。
そのシャーロック・ホームズの現代版として2010年・2012年に製作されたBBCのドラマ『SHERLOCK』に『The Children’s Encyclopedia(イギリス児童百科)』が登場していることを知った時の驚きと喜びたるや。情報元はtumblrの「Sherlock’s Danger Night」

Sherlock’s Danger Night: Sherlock has 4 volumes of The Children’s Encyclopedia by Arthur Mee on his bookshelf

 

20130501_sherlock_arthurmee

Sherlock has 4 volumes of The Children’s Encyclopedia by Arthur Mee on his bookshelf (from Sherlock’s Danger Night)

 

このシーンは、シーズン1 の エピソード2(S1E2)『The Blind Banker』 犯罪の鍵に本が使われているということで、シャーロックが自宅の本棚を探るシーン。イギリスでの評判を知り、2011年6月にamazon.co.ukからDVDを購入。それ以来、何度も見ているにもかかわらず、全く気づきませんでした。しかし、それもそのはず。このtumblrを見て、改めてDVDを確認したのですが、私の環境のせいか、それともブルーレイでないとダメなのか、『The Children’s Encyclopedia』の書名を判読出来るほどの画質を得られず。この眼ではっきりと見たかった。

とはいうものの、その背表紙からいつの時代の『The Children’s Encyclopedia』なのかは、検討がつきました(『The Children’s Encyclopedia』は、版を重ね長年出版され続けているので、装丁の異なるものが幾つも存在するのです)amazon.co.ukに出品されているもので、1950年にThe Educational Book Companyから出版されたもののようです。

amazon.co.uk: The Children’s Encyclopedia Vols. 1 – 10

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The Children’s Encyclopedia(The Educational Book Company)

犯罪推理の中に百科を目指すシャーロックが、子供向けの百科事典を今でも本棚に収めていることに感慨を覚えます。幼少期には、これを兄のマイクロフトと共に眺めていたのでしょうか。1950年の版ということは、シャーロックの両親が持っていたのを譲り受けたのかもしれません。もうひとつの謎は、全10巻のなかで何故4巻しか本棚に並んでいないのか。これまた、マイクロフトが残りの6巻を持っているのか。聖典同様に、推理・妄想が膨らみます。

ちなみに、この本棚のシーンで最初にシャーロックが手にする本が『Concise Oxford English Dictionary(COD)』高山さんといえばの本家『Oxford English Dictionary(OED)』とはいきませんでしたが、ここから『The Children’s Encyclopedia』が登場する僅か数十秒の間に、シャーロック – 高山宏 – アーサー・ミーの連関を想うのでした。

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Concise Oxford English Dictionary in SHERLOCK S1E2 “The Blind Banker”

 

 

1
5月

I’ll See All – 03

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やっと、私にとってのアーサー・ミー(Arthur Mee)と高山宏さんの繋がりに辿り着けそうです。その始まりは、もう一人の「宏」から。

私がアーサー・ミーの存在を知ったきっかけは、高山さんと並び敬愛する、もう一人の「宏」 荒俣宏さん。記憶は朧げですが、前後の状況を鑑みると、おそらく2005年か2006年のこと。紀田順一郎さんとの共著『コンピューターの宇宙誌- きらめく知的探求者たち』(ジャストシステム 1992)を、何気なく読んでいた時でした。

 

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紀田順一郎・荒俣宏『コンピューターの宇宙誌―きらめく知的探求者たち』

失礼ながら、紀田さんよりも荒俣さんありきで読み始めたのですが、アーサー・ミーについて語っているのは実は紀田さんのほう。その登場シーンを引用します。

イギリス人は博物館そのものが好きなのではないかなと思います。その理由はいろいろあるんですが、一つは『I・SEE・ALL』という、絵で見せる事典がありますね。あれを前に見ておりましたら、poetry(詩)をどう絵で表現しているのかと気になりまして。

中略

編者のアーサー・ミーという人は、I travelled among unknown men というワーズワースの詩を、自分でタイプでうって写真に撮って掲載しているんですよ。おりにふれて考えるんですが、これはpoetryの絵として正解じゃないかと思うんです。(74ページ)

 

実際に『I・SEE・ALL』で「Poetry」を引いてみますと、当たり前ですが、確かにその通り。

20130501_poetry

I・SEE・ALL: Poetry

 

それからは折りを見ては『I・SEE・ALL』を手に入れようとネットで検索。そうして2007年2月、神保町・明倫館書店のサイトに名著普及会による復刻版の『I・SEE・ALL』が出ているのを知り、すかさず電話。タクシーに飛び乗り入手したのでした(上の画像もそれ。ちなみに、今でも当時のオリジナルが欲しい気持ちは持ち続けています。)

それから約2年。ようやく高山さんとアーサー・ミーの繋がりを知ったのは2009年。「アーサー・ミー」で検索して出会ったブログ「忍法影縫いの術」

20090106 忍法影縫いの術:ミーイズム

アンドルー・クルミーの『ミスター・ミー』について語られる中に、高山さんが東大の『UP』2009年1月号で「こんなミーイズムなら大歓迎だ」というタイトルで、この「ミスター・ミー」はあの「アーサー・ミー」だと述べていることを知ったのです。

これはオリジナルに当たらねばと、後日、東大へバックナンバーを買い求めに行ったところ、品切れで買えず。ならばと国会図書館へ赴き、ようやく全文に目を通すと、今度はその中でユーリカ・プレスから『Children’s Encyclopedia(イギリス児童大百科)』が復刻されたこと、その解説を高山さんが書かれていることを知り、その場ですかさず閲覧申請。

ユーリカ・プレス:アーサー・ミー編集『イギリス児童大百科』

更にその連載が羽鳥書店から連載タイトルそのままに『かたち三昧』として2009年7月に出版。実際に購入したのは、2010年2月、あの「羽鳥書店まつり」の会場だったことも、今という位置から振り返ると非常に感慨深いものがあります。

羽鳥書店:高山宏『かたち三昧』

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高山宏『かたち三昧』(後ろにArthur Mee『I・SEE・ALL』)

 

しかし、これよりも遡ること10年以上も前に、高山さんがアーサー・ミーについて触れられているのを知ることになるのはもう少し後の話。『かたち三昧』と同じ、羽鳥書店から2011年11月に出版された『新人文感覚2 雷神の撥』

羽鳥書店:高山宏『新人文感覚2 雷神の撥』

この中に収められた『ユリイカ』1997年9月号「あまりにもボヘミアン-ルイス・キャロル考」の中に「希代の教育出版人」という冠を持って、アーサー・ミーの名が登場しています(ちなみに、先に記したユーリカ・プレス復刻の『Children’s Encyclopedia(イギリス児童大百科)』に寄せられた解説も、この『雷神の撥』に収録されています)

さぁ、これまでの整理が出来ました。もちろん、私が知らないだけで他にも書かれているものがあるやもしれません。失礼を承知で、今回の講演会の席で教えを請うことが出来ましたら。

 

26
4月

I’ll See All – 02

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アーサー・ミー(Arthur Mee)とは誰なのか。
まずは定番のWikipediaに御登場願います。日本語版には記述がありませんので英語版にて。

Wikipedia: Arthur Mee

プロフィールを簡単に訳すと以下のようになります。

アーサー・ヘンリー・ミー(1875年7月21日-1943年5月27日)
イギリス人の編集者でありジャーナリストであり教育者。『The Harmsworth Self-Educator』 『The Children’s Encyclopædia』 『The Children’s Newspaper』 『The King’s England』などで知られる。他にも複数の著作を残しており、その多くは愛国調で、また歴史やカントリーサイドの話題に関するものもある。

今となっては、この説明でも納得出来るようになりましたが、私にとってのアーサー・ミーの第一印象は、徹底したヴィジュアリストでした。彼の業績を知れば知るほど、その像は薄らいでいくのですが、何しろ最初の出逢いが、全ての項目に図像を用いた百科事典、その名も『I See All』(1928-1930) その後も、Wikipediaにも記されている子供向けの百科事典『The Children’s Encyclopædia』(1908-1910)や、同じく子供向けの新聞『The Children’s Newspaper』(1919-1965)などに用いられた図像に魅了され続けました。

20130426_iseeall

“I See All” from flickr photo by mark-s- http://www.flickr.com/photos/mark_s/527377426/

ふたつめは、百科事典を編纂していることに直結した、文字通り、百科を求める人。先に挙げたふたつの百科事典はもちろん、古今東西の文学作品から美しいものを選りすぐった『One Thousand Beautiful Things: Chosen From The Life And Literature Of The World.』(1925)など、アンソロジー的なものも複数残しています。

最後に、図像と百科への偏愛が一段落した頃、もうひとつの見方が出来るようになりました。それは子供への眼差しです。『The Children’s Encyclopædia』や『The Children’s Newspaper』という名前からも当然のことではあるのですが、彼が生きた19世紀末から20世紀半ばという時代背景もあり、次代を担う子供達の教育に対する姿勢(それは先のWikipediaにあるように、大英帝国への愛国的な面も目立ちます)が強く目に留まるようになりました。ちなみに彼の業績は海を渡り、日本の教育運動にも影響を及ぼすことにもなります。

と、簡単に紹介したところで、最後にこのブログならではの余談をひとつ。

このアーサー・ミーをネットで探す過程で、もう一人のアーサー・ミーに出会いました。それも、かの敬愛する「天文古玩」さんのブログにて。

20081026 天文古玩「そそる本(2)」

作者である玉青さんがブログを書かれたのは2008年10月ですが、私が知ったのはそれから約半年後、2009年の3月のことでした。玉青さんの文を引用させていただきます。

著者のサイラス・エヴァンスという名前で、ははーんと思われた方もいるでしょうが、この本はウェールズ語で書かれた天文学書なのでした。序文によれば(ここだけはアーサー・ミーという人が英語で書いています)、この本はウェールズ語で初めて書かれた、真に分かりやすい天文学入門書だそうです。

まさか同一人物かと調べると、その名もまさに「A History of Astronomy in Wales」というサイトに人となりが掲載されていました。

A History of Astronomy in Wales: Arthur Mee

アマチュア天文家として知られているということで、同姓同名の別人同士ということがわかりましたが、偶然にも、こちらのアーサー・ミーもジャーナリストとしての肩書きを持つ人物。更に生没年が1860-1926年ということで、私が知るアーサー・ミー(1875-1943年)と同時代を生きた人でもありました。

更に驚いたのは、彼の名前「Mee」にちなんで、月のクレーターのひとつが「Mee」と命名されていたこと。もうひとつの個人的な興味の対象である月に話が及ぶとは。これだから、知ることはやめられないのです。

Wikipedia: Mee(crater)

ということで、高山さんのお話しまで辿り着かず。まだ少し続きそうです。

 

25
4月

I’ll See All – 01

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数年来の夢が叶った想いです。

不忍ブックストリートの「第15回 一箱古本市」にあわせて開かれる「不忍ブックストリートweek」 4/20~5/6の期間に、トーク・展覧会・映画上映・ライブなど35の企画が開催されます。

2013 不忍ブックストリートweek

その企画のひとつとして、最終日の5/6、高山宏さんに講演をお願いしました。お話しいただくのは、イギリスの編集者、アーサー・ミー(Arthur Mee)についてです。

高山宏講演会「アーサー・ミーと知の愉しみ」

アルファベット順に拠らない子供向け百科事典『児童百科』や、全項目を図版で定義した百科事典『I See All』などで、20 世紀前半に知の愉悦を展開した英国人編集者アーサー・ミー。日本では未だ知られざる彼の業績を、著述等で触れられている学魔・高山宏先生に大いに語って頂きます。

場所◉ 旧安田楠雄邸〈文京区千駄木5-20-18〉
日時◉ 5月6日[月・祝]17:00~19:00
参加費◉ 1500円
予約◉ yoyaku@yanesen.org 不忍ブックストリート ※件名「高山宏講演会」。お名前、人数、電話番号を明記してください。

アーサー・ミーについて高山さんのお話しをうかがうことは、私個人としての数年来の夢でした。それをこのような講演会という形で語って頂けることになるとは。この貴重な機会を忘れないよう、アーサー・ミーを知ることとなった経緯や、アーサー・ミーと高山さんの繋がり、私個人の想いなど、講演会当日まで、思いのままに書き記していきたいと思います。

 

18
2月

ある雨の朝に

   Posted by: fumi

冷たい雨が降る月曜日。

ドイツの古書店から、あるヴンダーカンマーに関する書籍をタイトルに惹かれ衝動買い。初めて知る書名でしたが、他のサイトで追加調査をすることもなく。

振り返ると、現地に足を運んだのは既に6年も前のこと。思えば遠くに来たものです。今でも想い出すあの空間ですが、注文した本に記されている空間はそれよりも更に30年も前のこと。

再訪の時を夢見て読むのも、また楽し。
到着まで約2週間です。

22
1月

100個集める

   Posted by: fumi

コレクションの第一歩は、とにかく100個集めてみる。
そうすることで、それぞれの差異・足りているもの・足りないものなど、その先に必要なことが見えてくる。

このような姿勢を何かの本で読んだ記憶があるのですが、それが何だったのか思い出せず…

ともあれ、今回は、そんなお話。

ここ3年と記憶していますが、折を見ては買い求めるようになった赤い装丁の本。折を見てと言うくらいですから、血眼になって探すようなことはなく、足を運んだ書店やネットなどで不意に見かけた際に懐具合と折り合いがつくものを買い求めるくらいの態度ですが、それでも20冊超の赤い本が棚に並ぶようになりました。

しかし、 そんな態度で3年も経ってしまい、更に目を見張るほどの進展もないとなると、少しばかりの刺激も欲しくなるというもの。そこでネットの集合知に頼ってみました。私個人の赤い本の知識なんてたかが知れてますしね、世間で知られている赤い本にはどのようなものがあるのか覗き見を。

利用したのは、以前からユーザー登録していたウェブサービス「Sumally」

・Sumally

参加の動機は、aboutに記された下記の文章。百科事典と言われてしまうとね。

Sumally (サマリー) は、この世界に存在するすべてのモノの”百科事典”の作成を目指しています。あなたの好きなプロダクトをサマリーで世界に発信し、モノ百科事典を作りましょう。

Twitter同様に気になるユーザーをフォロー、タイムラインに流れるツイートをお気に入りに登録するように、そのユーザーが紹介してくれた赤い本をクリッピング。また、百科事典のページを悪戯に捲ってみるように、本のカテゴリに登録された膨大なリストを眺めては赤い画像に目を留めたり。

そうして出来上がった、100冊の赤い本。

 

赤い本 百冊

赤い本 百冊

 

私が所有しているものを除いた80冊弱のうち、存在を知っていたのは10冊ほど。ほとんどは初めて見るものばかり。古書として価値の高いものもあり、この先、実物を手にすることがないものも多いでしょう。

並べて目につくのは、その色の差異。所有する20冊ばかりでもそうでしたが、100冊並べると更に様々な赤を知ることが出来ます。また、赤にあわせる文字色は黒と白が多いことも。個人的に惹かれたのは、赤に赤を重ねる手法。「11」に逆さにした「11」を配置した一冊(偶然にも上から11段目)は、実物でその色の違いを確認したいもの。

さて、ネットとはいえ集めた100個。先に述べたように手に入らないものも多いので、これはこれ。150、200と続けつつも、実際の収集は今まで通り、再び静かに集めていくことでしょう。

9/20に記した、驚異の棚を模した国書刊行会の小冊子を紐解くエントリー「国書刊行会40周年記念小冊子 私が選ぶ国書刊行会の3冊」 その表紙に描かれた驚異の棚の同定調査、その後のその後です。

簡単にこれまでの経緯を。
まずは9/20の最初に記したエントリ−。これに対して、敬愛する博物系ブログ「天文古玩」の玉青さんからコメントを頂きました。

・20120920:国書刊行会40周年記念小冊子 私が選ぶ国書刊行会の3冊

そのコメントから新たに出自が判明したオブジェについて記したのが、10/11のエントリー。

・20121011:国書刊行会40周年記念小冊子 私が選ぶ国書刊行会の3冊 その後

このエントリーに対して、かんざきしおんさんから新たに4点のオブジェに対するコメントを頂きました(ブログへの反映が遅れ、失礼しました)

ということで、今回のエントリーは、そのかんざきしおんさんのコメントに対する調査報告から。
調べたところ、残念ながら教えて頂いたものが、国書の小冊子に掲載されているものと全く同じではありませんでした。しかし、そこから検索のヒントを得て、わかったことがあります。

まずは、今回の全ての発端、国書刊行会の小冊子『国書刊行会40周年記念小冊子 私が選ぶ国書刊行会の3冊』の装丁を(画像クリックで拡大します)

国書刊行会40周年記念小冊子 私が選ぶ国書刊行会の3冊

今回、かんざきさんから教えて頂いたなかから、まずは棚番号18の石膏像(鼻・耳・口)
これはおそらく、ミケランジェロ作、かのダビデ像のパーツではないかと。
調べ始めて最初にひっかかったのが、大英博物館が作ったという目・鼻・耳・口の4点。

・Quirao.com: David Nose (by Michel-Angelo) 19 cm by British Museum

David Statue Parts (this image from Quirao.com)

確かに形は似ていると思い、調べを進めたところ、更に大きな画像を見つけ確信を強めました。

・石膏像ドットコム: ダビデ像の鼻
・石膏像ドットコム: ダビデ像の口

ダビデ像の鼻・口(石膏像ドットコムより)

2つめは、棚番号33の貝の化石。
かんざきさんからは「スカシカシパン」と教えて頂きました。私は「タコノマクラ」と思っていました。スカシカシパンは、タコノマクラ目カシパン亜目スカシカシパン科。タコノマクラは、タコノマクラ目タコノマクラ亜目タコノマクラ科。仲間ではありますが、科が違うもの。
ここで今一度、小冊子の画像を眺めると、中央下部に縦長の開口部が。これを頼りに調べたところ「キーホールサンドダラー」ではないかというところまで来ました。ちなみに「サンドダラー」は「スカシカシパン」の英名。ということで、かんざきさんの考えのほうが、より近かったということになります。

しかし残念ながら、小冊子に使われているキーホールサンドダラーの出自の発見までには至りませんでした。

3つめは、棚番号36の昆虫。
かんざきさんから「サカダチコノハナナフシ」と教わりました。教えて頂いたリンクを辿ると確かに。しかし、これまた小冊子との同定までには至りませんでした。

しかし、その過程で見つけた素晴らしいアート作品が。アーティストのJennifer Angusによる標本を題材とした作品の数々。イスラムのタイルを想起させるような、円を中心に幾何学的に配置された虫達(サカダチコノハナナフシも使われています)の美しさ。

・FiberARTS: The Work of Jennifer Angus:A Closer Look

The Work of Jennifer Angus: A Closer Look (this imege from FiberARTS)

Jennifer Angus 自身のサイトもありますので、こちらも。ウィスコンシン大学のデザイン学科の教授だそうです。

Jennifer Angus

最後、4つめも同じく棚番号35の蝶。
「ヒメジャノメ」とコメントを頂きましたが、眼状紋と縦に走る白色帯の位置関係が逆になっているところが気になっています(だからといって、じゃぁ何なのかと特定出来る知識を持ち合わせていないところが情け無いのですが) 更なる調査を続けたいと思います。

ということで、それでもひとつ、石膏像の出自は判明したと言ってもよいでしょう。かんざきしおんさん、ありがとうございます。

9/20に記した、驚異の棚を模した国書刊行会の小冊子を紐解くエントリー「国書刊行会40周年記念小冊子 私が選ぶ国書刊行会の3冊」に、敬愛する博物系ブログ「天文古玩」の玉青さんからコメントを頂きました。

・20120920:国書刊行会40周年記念小冊子 私が選ぶ国書刊行会の3冊

・天文古玩

天文にお詳しい玉青さん、小冊子の棚に納まっている月球儀をご存知で、その出自を教えてくれました。オックスフォード科学史博物館(Museum of the History of Science, Oxford)が所蔵する月球儀。1797年にジョン・ラッセル(John Russell)が製作したものとのこと。

博物館のサイトで検索したところ、まさしくそのものが。

・Selenographia Moon Globe, by John Russell, London, 1797

Selenographia Moon Globe (via Museum of the History of Science, Oxford)

こちらが、国書刊行会の小冊子『国書刊行会40周年記念小冊子 私が選ぶ国書刊行会の3冊』。月球儀は右下、棚番号38(画像クリックで拡大します)

国書刊行会40周年記念小冊子 私が選ぶ国書刊行会の3冊

ちなみに、この月球儀については、玉青さんのサイト「天文古玩」でも2007年に触れられていました。

・20070718 天文古玩:プレ=アポロ時代の月球儀(その2)

寡聞にして、John Russellを知らなかったので、Wikipediaを。画家なのですね。

・Wikipedia: John Russell

こうなると連鎖は続くもので、オックスフォード科学史博物館で「moonscope」と題された展覧会が2007年に開催されていたのも発見。博物趣味だけでなく、月球趣味も満たされる喜び。ジョン・ラッセルと並んで作品が展示された現代の画家、レベッカ・ハインド(Rebecca Hind)の存在も初めて知りました。

・オックスフォード科学史博物館「moonscope」

玉青さん、ありがとうございます。

10
12月

buds after the fire

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twitterの利便性に溺れ、ブログの更新が滞るのはよくある話。それがなくても,ここのそもそもの在り方も再考せねばいけないのですが。

とは言え、この話題はやはり避けては通れず。

パリの剥製商、デロールが突然の火事に見舞われたのは2008年2月1日。その後、被害にあった剥製・標本を用いた展覧会「Nature Fragile」が催されたのが同年11月。この時は同名の図録も発売されました。

これで火事にまつわる話は終わったと思っていたところ、その「Nature Fragile」にも参加した写真家2人の書籍が、今年に入って刊行されておりました。

091210_deyrolle_01.jpg
1000°C Deyrolle: 1er février 2008
Photo by Laurent Bochet, Text by Louis Albert de Broglie
Piblisher: ASSOULINE

眼を惹かれるのはその装丁。住所表記もあるということは、店頭にあった看板なのか。
しかし内容については、サイトに用意されているプレビューを見る限りではありながらも、昂揚感にはやや欠ける印象。白を背景に焼け出された標本や什器が置かれた構図は、美しくはあるものの一方でよそよそしさが。また寄り気味で撮影された昆虫標本も、標本は額あってこその標本と思うと残念至極。

また「Paris By Appointment Only」によると、写真家のLaurent BochetはデロールオーナーLouis Albert de Broglieの友人とのこと。この本に収められている写真を用いた展覧会も、デロールにて開かれたようです。

091210_deyrolle_02.jpg
Touched by Fire
by Martin d’Orgeval
Publisher: Steidl

もう一冊は、Laurent Bochet同様、デロールと昵懇の仲である写真家による一冊。こちらもこの本に収められている写真を用いた展覧会が、デロール始め、アメリカやイギリスで開かれていた模様。

こちらもサイトにプレビュー。見ると、これがいい!。きっちり額も含めて撮影された標本、陰影のある色彩と質感。机らしき背景もまた雰囲気を増していて。細かくて判別は出来ないものの、ページ左にびっしりと記されたリスト表記は被害に遭った剥製・標本について?。これまた気になる。

こう書くとお分かりでしょうが、オーダーしたのは『Touched by Fire』。海の向こうからですが、今年中には届くのではないかと。『1000°C Deyrolle: 1er février 2008』は、何処かで現物を見てからの判断に。

10
5月

All the Old Klickies

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失って気付く相も変わらずの愚かさ。

ハンス・ベック氏のニュースを追いかけることで,Playmobilへの想いが再び強まる。現在,唯一集めていると言えるSpecialの未入手分をまとめ買いしたり,長らく放置していたebayを久しぶりに覗いてみたり。その流れでここ5年ばかりの勉強不足を埋める意味も込めて『Playmobil Collector 1974-2009 – 3. Edition』も購入。

初版を購入したのが,まさに5年前の2004年。そこから厚さも1.5倍増しとなった今回の第3版。1974年の発売開始から2009年までの約4,500品を収録。これは,飽きないなぁ。数がこれだけ膨大だと所有・未所有という個人的な想いはどうでも良くなり,その歴史の流れを目で追うだけでただただ楽しくて。販売国での違いや同じアイテムナンバーのバージョン違いなど,小ネタもしっかり。

それでもマニアの受難的な視点で言えば,ここに掲載されていないモデルの存在が気になるところ。特にマーチャンダイズ系に目立つようで,ウチにも2・3。これはやはり,知らせるべきだよね。また,巻頭の謝辞に記されている世界各地のコレクターやファンの名前に見覚えのある方もちらほら。皆さん,お元気のようで何より。なかには現地で直接お逢いした方もいたりして,久しぶりに連絡でもとってみたくなったり。