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3月
博物の金沢:工芸という生物
では、金沢で出逢った博物的と呼びたくなる美術品を。
最初は、陶芸家の薄井歩さん。
2013年3月に金沢を訪れた際に、石川県立伝統産業工芸館で開かれていた個展「パライソ 極楽の浜」のチラシを目にして一目惚れ。すぐさま会場に向かいました。
自然界、特に貝や珊瑚、甲殻類などの海洋生物を想起させる形と、その表面を細密且つ高密度で覆う紋様。それは生命を持っているようでもあり、また今しがた化石として掘り出されたものにも見えました。
この時は会期終盤に訪れたため、欲しいと思った作品には軒並み赤いシールが。その後、同年9月に京橋・LIXILギャラリーにて開かれた個展「陶 パライソ」で新たな作品を拝見。ようやく我が家に迎え入れることが叶いました。
続いては、金工の河野迪夫さん。
魚類・鳥類・昆虫、古生物まで様々な生物の形態から生み出された作品は、有機的な美しさと同時に、銅と緑青の質感も伴った無機質な機械的魅力をも感じます。そのまま生物として自然界に存在するように感じられたのが薄井さんの作品であるのに対して、河野さんの作品には、現代人なのか古代人なのか、はたまた宇宙人なのか、誰か知的生命体によって作られたハイブリッドな生物に見えます。
標本や剥製のような王道としての博物品を愛でる愉悦とは別の喜びを覚える、現代の博物的なる美術品。次に金沢を訪れる時、また新しい出逢いのあることを。