11
5月
寄席と思えば腹もたつまい
エルメスギャラリーで,最終日のSarah Sze展。
何度訪れても新たな発見。広大な世界の中に数多く存在する微少な世界と,そこで同時多発的に繰り広げられる秩序と混沌。現出した『塊魂』。
思考と行動のエアポケットに入った瞬間,十和田市現代美術館で覚えた自分でも驚くばかりの憤りが首をもたげる。そこで浮かんだひとつの解は,美術館は寄席の定席だと考えれば良いのではと。
動線に従って巡る常設展は,さしずめ番組表に沿って次から次と高座に上がる噺家を見るようなもの。全ての噺家が心の琴線に触れるわけがないのと同じように,美術芸術だって相性の良し悪しはあろうものよ。そう,今回はたまたまあわない噺家が多かっただけの話。それでも寄席同様に予期せぬ嬉しい出逢いもあったのだから,その他大勢を酷いと嘆くよりも,素晴らしいと思った作品と作家を今後は追っていけば良いだけ。そう,寄席で興味を惹かれた噺家の独演会に足を運ぶ流れと同じ。
独演会と言えば。
常設展を寄席の定席と考えるならば,特別(企画)展は同日同場所で開催されている独演会。己の嗜好を知った上で足を運ぶ/運ばないを選ぶものだけに,未知なるものとの邂逅を求める気持ちが強すぎてもいけないのかも。また,せっかく訪れたのだからというもったいない意識も良し悪し。関心が無いのであれば見ないという選択も時には有効であることも今回の収穫。