DJ Kyon
時事通信ホール 14:30~15:30
大銀座落語祭「柳家喬太郎におまかせの会」
開口一番,「柳家喬太郎に丸投げの会にようこそ」。内容について主催者側から全く注文がなかったそうで。となると,話すのか?,それとも歌うのか?(笑)。丸投げの60分をしかと見届けようとする会場の期待感はいやがうえにも高まる。
「柳家の修行は『道灌』から始まり,『子ほめ』,『初天神』といったような噺を習っていくわけですが」という振りからまず始まったのが『子ほめ』。しかし,今までに聴いたことのない早い口調で物語が進む。60分あるのに?,なぜそんなに急ぐの?。一体,何をしようとしているのかわからないでいるうちに,八っつぁん,子ほめに失敗。しかし,そこで噺終わらず,すかさず父親の竹さん,ご隠居のところに生まれた赤ん坊の名前をつけてもらいに。そこでご隠居考えて,ひねり出した名前が寿限無寿限無五劫の…。
大きくなった寿限無君に叩かれてこぶをつくった子供が家に帰ると,父親が羽織を着て初天神に出かけようとしている。上手いことついていくことが出来,あれ買ってこれ買ってと言いながら最後に凧揚げをしていると酔っ払いとぶつかる。謝る親子に悪態をつきながら酔っ払いが家に帰ると,まさに奥さんと子供が出て行くところ。
別れてから三年。酒もやめ心を入れかえたおかげもあって,鰻屋の二階で親子三人仲直り。そこに,木場へ一緒に行くはずだった番頭が現れ,旦那の義太夫を聴きにきてくれと頼む。しかし,やっと親子三人暮らせるようになったんだからと断られ,それを店に戻ってしぶしぶ旦那に報告。すると旦那,「今日は特別に店の者に聞かせよう。皆,どうしてる?」。あいつは駄目,あいつも駄目と言ううち,何番目かに「文七はどうだ?」。その頃,文七は掏られた五十両の金を苦に吾妻橋の上から身投げをしようとしていた…。
左官の長兵衛から貰った五十両が縁で,その娘,お久と結婚した文七。二人で元結屋を開き商売も繁昌,更には子宝にも恵まれる。その子に名前をつけなければということで文七が向かったのはご隠居の家…。
子ほめ-寿限無-初天神-子別れ(子は鎹)-寝床-文七元結-寿限無
噺の終わりと始まりが淀み無く見事に繋がり,客席からはその移行に気付く度に驚きと喜びに満ちた歓声と拍手が湧き上がる。口演であるからにはメドレーと表現すべきかと思いつつ,実はセットリストのほうがあってるんじゃないかと。
そんな終わること無き多幸感を覚えたノンストップ60分。鳴り止まない拍手の中,和服姿のDJは脱いだ羽織を抱えながら何事も無かったかのように袖に消えていきました。