Day08c(Vienna)
トラムの停留所からリングの外へ向かうと,シンメトリーで建つ巨大な建築ふたつ。目指すはその向かって左側,「美術史博物館(Kunsthistorisches Museum Wien)」(ちなみに右は自然史博物館。今回は時間の都合でやむなくパス)。
全館をまともに見たら1日かかっても廻りきれない収蔵品数。それを最長でも2時間で見ようってんだから無理は承知。切るものはバッサリ切り,絵画を中心に的を絞っての鑑賞。以下,思い出すままに羅列(タイトルは英語表記,またリンクは最初の2つを除いて全て美術史博物館オフィシャル)。
ジュゼッペ・アルチンボルド(Giuseppe Arcimboldo)
・『Fire』(www.illumin.co.uk)
・『Water』(www.illumin.co.uk)
・『Summer』
ベルナルド・ベロット(カナレット)(Bernardo Bellotto, called Canaletto)
・『Vienna Viewed from the Belvedere Palace』
・『The Imperial Summer Residence Schonbrunn: Court Facade』
ピーター・ブリューゲル(Pieter Bruegel)
・『The Tower of Babel』
・『Children’s Games』
カラヴァッジオ(Caravaggio)
・『David with the Head of Goliath』
ピーター・パウル・ルーベンス(Peter Paul Rubens)
・『Ildefonso Altar 』
・『The Lamentation』
ヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer “van Delft” )
・『The Artists Studio』
そりゃ,ブリューゲルの『バベルの塔』には感動を越えて畏怖の念すら抱いたし,カラヴァッジオの黒は相変わらずの底無しで引き込まれそうに…。しかしそれでも何が一番と問われたら,やっぱりアルチンボルド。これが初めての実物体験,全体図として異形の姿はもちろん,ひとつひとつのパーツの細かい描写力,想像を遙かに越えた深みを持つ色彩…。ほんと,いつまでだって見ていられそう。更に言えば,これらがプラハの宮廷内で描かれていたというのも自分にとって興味を惹くところ。ルドルフ2世,たまらんすね。
大通りを渡ってリング内へ入り,だだっ広い庭園を進むとガラスのドーム建築が見えてくる。その一角が目指す「熱帯蝶類植物園(Schmetterlinghaus)」。
温室特有のあのムワッとした空気の中,眼を凝らすと宙をヒラヒラと舞う蝶がそこかしこに。そこから目線を下に降ろすと,カットされたオレンジやバナナ,または造花につけられた甘味(白い粉だったので普通に砂糖?)にもワラワラと。なかには蛾の群れなんてのもあって,好きな人にはたまらない光景(そして苦手な人にもたまらない)。
にしても,それら用意された甘味が余程美味しいのか,それとも完全に人間慣れしてしているのか,どこまで寄っても逃げるどころか羽ばたきひとつする気配無し。それならばと,デジカメの性能極限までレンズ面を近づけて接写。
十分に蝶と戯れたので,宮殿の建物をグルリと一回りして次の目的地,「地球儀博物館(Globenmuseum)」へ。
入り口のカウンターには学生,もしくは助手といった雰囲気の女性が一人きり。彼女からチケットを買い,奥へ進むと,あるわあるわ。資料によるとその数,380個以上(地球儀の単位は「個」でいいのかどうか?)の地球儀。大きさ・年代・また月球儀や天球儀など地球儀以外のものまで多種多様なものが一堂に。
それらの中で惹かれたのは小さきものの数々。オブジェ感に溢れた地球本体のそのサイズはもちろんだけど,加えてそれを収めるために作られた専用の箱に激しくトキメキ。ただ収めるだけではなく,その裏側には天球が描かれていたりなんかして,そりゃもう大変っすよ。
っつーか,もうその場で想像力の旅へと出発。地球を箱にしまいこみ,それをポケットに入れて街を歩く当時の学者。転んだか何かの拍子で地球が箱から飛び出しコロコロと。学者は追いかけるものの,大きな飴玉だと思った子供が口に含んでは吐き出し,そこに通りかかった馬車に蹴られ,ご婦人が仰ぐ扇で跳ね飛ばされ…,といった具合にエンドレス(オチは無し)。また月球派としては,月でこれを作ってみたいとも思ったり。
ちなみに,ここの開館時間はかなり短いので注意が必要。月~水と金曜が11:00~12:00,木曜は14:00~15:00と各曜日1時間のみ(今日は木曜ということで午後訪問)。また,2005年夏には移転も予定されているそうなので,そちらも加えてご注意。
地球儀博物館を出てそこから前方に数十m進むと,いよいよ最後の目的地,「国立図書館(Osterreichische Nationalbibliothek)」の「大広間(Prunksaal)」。
良くも悪くも威風堂々・豪華絢爛。奥行き80m,高さ20mという大空間,天井のフレスコ画,ホール中央に立つ像,ふんだんに使われた大理石…。もちろんひとつひとつ見ていけば,そのどれもが素晴らしい技巧を施されたものであることはわかるんだけど,スケールが大きい分,どうしても大味に見えてしまう。ストラホフ修道院が小さいながらも(もしくは小さい故に)細部に宿る魂を強く感じられるのとは明らかに異なる印象。しかし一方では,これだけのスケールだからこそ,訪問者は自由にこの空間を歩きまわりその驚くばかりの空間体感ができるわけで。これは入室が禁じられ,扉の外から眺めるだけのストラホフでは決して味わえないもの(ストラホフは足を踏み入れられないことが逆に神秘性に繋がって良いという考え方も出来ることは出来るけど)。
なんてことを考えながらもバシャバシャ写真を撮り続けていると(デジカメが無念のバッテリー切れで銀塩モノクロのみに),梯子階段に登って棚の書籍を整理していた白衣の書士が,何冊かの蔵書を手に梯子階段を下りて歩き始める。何処へ行くのかと眼で追うと,ある棚の前で立ち止まり不意に何かに手をかける。するとその棚が手前へと開き,その向こうに空間が現れたではないですか。近くに寄って中を覗くと,背の低い書棚やテーブルなどが見える。これはやっぱり作業場?。ストラホフも含め,表側の美しさに気を取られて,バックヤードの存在を完全に忘れていたよ。自分にとって,これはかなり重要な経験。
幾つかの取りこぼしはあるものの,とりあえずこれで当初の予定ルートを一回り。ここで時計を見ると,プラハへと戻る鉄道の発車時刻まで1時間あまり。シュテファン大聖堂を再訪してみるか,それとも古本屋巡りをしてみるか…。しかし色々と考えた末の結論は名物料理ポークシュニッツェル。DEMELでザッハとコーヒーを口にしただけで腹減ってんのよ…。オペラ座近くのカジュアルな店,次から次にテイクアウトで訪れる地元の人々を掻き分けて店内でガッツリ。
腹も満たされたところで,トラムに乗ってWien Südbahnhof駅へ。そのままホームへと向かい,既に入線している列車(その名も「スメタナ号」)に乗車。定刻16:34に出発。途中,滞りなくパスポートコントロールも済み,20:55にPraha hl.n.駅到着。やっと戻ってまいりました。
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