Archive for the ‘日記’ Category

21
2月

流れる景色に乗せて

   Posted by: fumi

本番前,最後の皇居ラン。
身体の澱みと心の澱みは表裏一体。想わず想うあらゆる想いを,後頭部の扉を開いて流し去る感覚が心地良い。

必ずの展覧会。
杉浦千里展~知られざる博物画の世界~
3/17~23
かなっくホール 横浜市神奈川区民文化センター ギャラリーA

朝日新聞のサイト「どらく」内,アリャマタコリャマタ氏のコラムで知る。寡聞にして存じ上げなかったお名前。ウルトラマンシリーズのキャラクターデザイナーにして現代の博物画家。

 

20090221_okinawa

6
1月

雀百まで踊り忘れず

   Posted by: fumi

帰省中,思い立ってほぼ10年ぶりにスキーを。

想像以上に滑ることが出来るものね。
道具の変化(カービング+短縮された板長)に助けられたところはあるにせよ,かつて苦しんだコブ斜面をそれなりのリズムとスラロームで一気に滑り抜けることが出来たのには驚き。

一方で,もちろん体が覚えているところもあるはず。小中学生の頃までに身についたことって,ブランクがあってもスイッチが入れば自動再生されうる可能性を実感。色々と脇道に逸れたりしたものの,結局はそこに戻っていくのね。

湖にかかった天使の梯子も,また綺麗なことで。
いや,スキー場だけにリフトか。
一日券で昇れませんかね。

 

20090106_tazawako

4
1月

鶴の千五百四十八番

   Posted by: fumi

新年の始まりはいつも同じ。
古今亭志ん朝の「御慶」を聴くことから。

富くじ千両に当たった八っつぁんの屈託のない性格はもちろんだが,それ以上に彼を取り巻く人々の妬みの無い心根が気持ち良い。あまり,現代に投影して考えるようなことはしたくないとは思いつつも,やはり色々と考えてしまいますね。もちろん,自分のことも。

なわけで,皆様。
ぎょけぇっ!!

 

20090104_gyokei

30
12月

師走完走

   Posted by: fumi

複数の画像を掲載出来ると,日記も一度で複数日に渡って記せるから楽ね。

今月は初めて尽くし。
まずは江戸で投扇興。その様子からとっつきにくい印象だったものの,一対一の対戦形式や,十投して得点を競い合うルールなど,やってみればダーツやボウリングに近い感覚。狙って点数を取れる上手い人が強いのはもちろんだが,点数の高い役を出せば最後の最後に一発逆転も可能な偶然性のあるところも初心者には嬉しい点。

先週は上洛して南座で初めての顔見世興行(昼の部)。
『ぢいさんばあさん』,良かったなぁ…。若かりし頃の美濃部伊織の行動心理には共感出来ないところもあるが,年老いて我が家に戻った夫婦の機微に心揺さぶられる。その老夫婦のために座布団を新調する若夫婦の気持ちもまた良くて。

翌日,江戸に戻って昼夜の落語会から,そのまま呑み。ムンクの叫びのような鯉(金魚?)に釘付け。数えてみれば今年も結構な数の落語を聴きました。近場で通える幸せを噛みしめつつ,来年もまた。

皆様も良いお年を。

 

20081230_shiwasu_01

20081230_shiwasu_02

20081230_shiwasu_03

26
10月

驚異の小部屋 / 驚異の劇場

   Posted by: fumi

銀座エルメスに東大のモバイルミュージアムが導入されたという話を聞きつけ足を運ぶ。8階のギャラリーを訪れる際もそうだが,ブランド自体には全く購買欲を持たないだけに,すみませんねぇ,いつもタダで楽しませてもらってばかりでと若干,平身低頭気味。

驚異の小部屋

イメージとしては「鳥のビオソフィア」の赤い部屋。赤い壁に囲まれた空間の中,同展で目にした標本・什器を中心に,小石川で目にするものが散りばめられている。ヴンダーカマーも元々はトンでもないお金持ちの方々の愉しみであったことを考えると,こういう場の博物展示も理に適ったものだなと。そういえば,パリのデロールもショーウィンドウ向けに剥製を貸し出していたりするんだっけ。

とは言え,やはり本郷や小石川で見たほうが良いと思ったのは,自分がお金持ちではないからでしょうね。また個人的には秘めた愉悦という印象からも逃れられないわけで,知る人だけがこっそり訪れる,しかも外からはその中に何があるのか分からない雰囲気が無いと興奮出来ない体のようです(そういえば,エルメスは外から中の展示が見えるんだよな。あれもちょっと)。

退店後,ジムで2時間みっちりと体を禊いだら,東京国際フォーラム ホールA。

Sigur Ros Japan Tour 2008。

ジム終わりで体に熱も残っているので,何か飲んで落ち着こうかとドリンクバーへ向かうと,唐突に声をかけられる。氷国つながりで顔見知りの方。やっぱり,誰かはいらっしゃるのね。先月,例の危機直後に現地を訪れた話などを聞き,年末の再会を期して辞す。

バンドも変わればオーディエンスも変わる。5月のSteve Reichのライブを思い出すような若い聴衆層の熱量で,国際フォーラムという場から想像していたものとは明らかに異なる景色。それでもこの差異は嬉しい誤算。まるでこの変化に対する己の意識を試されているかのよう。最前列,立って体を揺らし続けている女性のステージライトでシルエットとなった綺麗な曲線を眺めながら,音を聞くともなく想いを巡らせる。

アンコールはsvefn-g-englar~Untitled #8(a.k.a Popplagið)。奇しくも5年前の国際フォーラムと同じ。それなのになのか,それだからこそなのか。

何にでも意味を求めてしまうのは良くない癖ね。

 

20
9月

やっと逢えたね

   Posted by: fumi

リュー・ドゥ・バックですれ違った女性の香水に遠く離れた恋人を思い出す。

匂いが喚起する記憶の甘美と残酷。


そんな文章が自分に書けるわけないじゃない。

階段を一段一段上がる度に強くなる匂いにどこか覚えあり。これは東大博物館小石川分館の匂い?。飴色の木製床,天井まで届く木製キャビネット,そして集いし標本の数々。はるばるパリまでやってきたはずが,はるばる東京に戻ってきていたとはね。

かつての姿を知る人ならば相違点にも気づくのでしょうが,初めて訪れた者にとっては何事もなく何十年とこの雰囲気を保ち続けているとしか思えない。特に手前の部屋,虎や水牛などの大型剥製が佇む空間は期待に違わぬ景色。奥の部屋,鳥類の並ぶキャビネットもその豊かな色彩に目を見張る。ただ,よく見るとキャビネットの中には何処か密度が足りないものも。この辺りにまだ復興半ばの現実を見る想い。

奥のテーブルでは,大泉滉とウィル・ライトを足して2で割ったようなオジサマが,カミキリムシに向かって器用にピンを刺している。欲しいものもあれば訊きたいこともある。作業を邪魔してゴメンねと話しかけると,もちろん返答はフランス語。こちらのつたない英語とあちらの完璧なフランス語。どこまで行っても平行線。これが噂に聞くフランスの洗礼?。お互いに若干の気まずい空気が流れ始めたところで,オジサマが何処かに電話。すると,1階からブロンドのマダムが登場。疑ってゴメン,オジサマは良い人でした。素敵なマダムの通訳のおかげで幸福な時間が流れていく。

訊くことも訊いたし,買うものも買ったし(そりゃホントは,高くて買えないものばかりだけどね),そろそろ辞するかとひとつ大きく深呼吸。小石川の匂いに混じり,何か焦げたような匂いが鼻腔を抜ける。興奮状態では気づかなかった7ヶ月前の残り香…。そう思って今一度と店内に目を配ると,一番奥のキャビネットの中に黒く煤けた店内の写真。世界を標本するこの店が自らを標本する。

ますます好きになりました。

 

20080920_deyrolle_02

19
9月

わいわいルドルフランド

   Posted by: fumi

時におかしい『芸術新潮』の言語感覚の中でも,特に心奪われたのは2002年10月号。ルドルフ2世の元に集いし人々や,そこから生まれた作品から称された表題のキャッチコピー。

そんな4年ぶりの綺想の帝国は更なる観光化が着々と。黄金小路を通ることそれ自体が有料化されていたのには驚き。これこそまさに錬金術。誰が通るかそんなとこ。

そんなささくれた心を癒してくれるのは,ストラホフの図書館,そして国立博物館の鉱石部屋。

20080919_strahov

 

15
9月

剥製標本は二度,息を引き取る

   Posted by: fumi

過日,知人宅にて利きチーズの宴。

集いし中にパリからのお客人。
何か話さねばと自分の中にある彼の都市への知識から精一杯に振り絞って選んだ会話の発端。

「いつかはデロールに足を運びたいんです」。

ただパリというだけでお客人の背景も知らずにいきなりそれかよ。当たらずとも遠からじ,自分が「アキバのメイドカフェに行きたいんです」と言われるようなものじゃないだろうか。ところが,これはやっちまったかと身構える間も無く,先方から放たれた言葉に我が耳を疑った。

「デロール,火事で焼けたんですよ」

これほどの寝耳に水もあったものかと。調べると,オフィシャルのサイトにしっかりと記載されている。しかも半年以上も前の2月のこと。アンテナにもRSSにも登録していないからこんなことになるんだよ…。

馴染みの無いフランス語をgoogleに頼んで英語へと訳してもらい(日本語訳はさすがに超訳が過ぎて),事の次第を追いかける。

火事当日の模様
火災前/火災後の店内の様子

原因は漏電,出火場所である2階はほぼ全焼。写真では2階の窓から外に向かって勢いよく伸びる炎,また黒く焦げた部屋の様子なども事細かに窺える。そして,その部屋には焼けただれた剥製標本の姿。永遠のはずであった命を失ったその行き先は?。遅きに失したどころか何ら接点もないことを承知で,廃棄するくらいならくれ。

幸いにも修復は進んでいるらしいが,依然作業中の部屋も幾つか。
こりゃね,やっぱりね…。

 

20080915_deyrolle_01

10
8月

ただの呑み会

   Posted by: fumi

早くに目が覚めた夏の朝は酒と蕎麦に限ると足を運ぶも,案の定の満員御礼。外で待つには絶好の曇天日和とはいえ,快楽のためにそこまで我慢強くなれるはずもなく,踵を返して麦茶と素麺。

朝の仇は昼にとる。ゆるゆると出かけ,名称復活となった圓朝まつり。早々に栄助さんから真打披露興行の前売を購入する務めを果たすことが出来たので後は呑むだけ。「立呑屋文左衛門」,「柳田カクテル之進」と梯子をしながら辺りを見回すと,そこかしこに見知った顔。お互い,コップ片手に呑んで語って。

途中,酔い覚ましも兼ねて中抜け。三の丸尚蔵館「帝室技芸員と1900年パリ万国博覧会」。4期連続の1期目。仮想建築としての図面を描いた伊藤平左衛門「日本貴紳殿舎計画図」をじっくりと。西洋的なパース図と日本の意匠が描かれた襖や格子も精密な立面が興味深い。仮想ならばいっそCGで建ててみるの面白いかも。次回,第2期はお待ちかねの橋本雅邦「龍虎図」。

午後,都々逸の講評にあわせて祭に戻るも,それが終われば同じことの繰り返し。一つ所に腰を落ち着け,酒とお喋りで最後まで。なんて贅沢な雰囲気の呑み会なことか。

帰途,往来堂に寄ると「三冊屋」開催中。てっきりabcや三省堂でばかりと。

 

20080810_encyo

23
7月

大笑福亭福笑一門落語祭

   Posted by: fumi

大銀座落語祭だけは,ただただ小朝にありがとうございます。
昨年の「柳家喬太郎におまかせの会」に負けずとも劣らず,今年はまさかの福笑・たま・喬太郎の揃い踏み。

「柳家喬太郎と上方落語 その一」
立川こはる  真田小僧
笑福亭たま  胎児
柳家喬太郎  ほんとのこというと
お仲入り
笑福亭福笑  絶体絶命
柳家喬太郎  純情日記 -横浜篇-

終わってみれば,純粋な上方落語とのやり取りと言うよりは,キョンキョン vs 福笑一門の東西新作(創作)対決。そして,この場をかっさらったのは紛れも無く福笑一門。弟子のたまが彦いちばりの肉体芸を見せれば,師匠の福笑はお手洗いが見つからずにもがき苦しむ女性のラブストーリーという不条理。そりゃもう,下品でえげつなくてひどすぎますわ(誉め言葉)。それでも,巧みな登場人物の描写と対比で最初から最後まで笑わせるその魅力。聴きながら東の名作,三遊亭円丈『肥辰一代記』を思い出す。これは是非とも東西下品対決を聴きたいもの。

一方の相対するキョンキョンは,独演会直後で抜け殻という発言もふまえると無難に返したというところか。どちらも安心して身を委ねられる噺で面白かったのは確かだけれど,客なんて勝手なもの,福笑の挑発(キョンキョンの言葉を借りると,「あの人,私を出にくくしてやると言って高座に上がったんですよ」)に真っ向勝負を挑んでほしかったところ。そうだなぁ,『一日署長』で両名をいじり倒してくれたら素敵だったのに。

さて,今席は鈴本昼でキョンキョン主任。
次の土日しか考えられないけれど,何とかね。